こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

テッド・バンディ

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こぼれるような笑顔と相手の気持ちを先読みする濃やかな心遣い。明晰な頭脳はプロの法律家を前にしても一歩も退かず、信念を曲げることはない。物語は、20人以上の女性を殺害し死刑判決を受けた男の後半生を描く。状況証拠は明らかに彼の犯行を示唆しているが一切認めず無罪を主張する。憎むべきシリアルキラーなのに劇場型裁判のおかげで熱烈な支持者まで現れてくる。さらに減刑を得るために取引しようとする弁護士を解任する。豊富な法の知識を駆使して自分自身の弁護をするシーンは、検察・裁判官までもけむに巻く痛快さ。希代の大嘘つきなのか、まだ明かされていな真実はあるのか。「パピヨン」を愛読書に、希望を信じ恋人にも信じさせ、脱走を繰り返す姿は、法と国家にひとりで立ち向かうアンチヒーローの風格さえ漂っていた。

1970年代の米国、シングルマザーのリズをナンパしたテッドは、そのままリズ母娘と暮らし始める。ある日テッドはユタ州で逮捕され、女子大生誘拐事件の容疑者として新聞に顔写真を掲載される。

証拠不十分で釈放されたテッドだが、今度はコロラド州で逮捕され殺人罪で起訴される。事態は新たな展開を呼び、州をまたいだ連続殺人事件の様相を帯びてくる。そこでも無実を訴えるテッドは裁判中に逃亡する。決してあきらめない意志の固さと行動力、そして知能の高さは、もしかしたら冤罪なのかと思わせるほど。現代なら解離性同一性障害などと分類するのだろうが、この作品はそうしたアプローチはせず、あくまでテッドの言動を追う。彼が何を考えているのかは最後まで分からない。人格が入れ替わったがゆえに、第一人格である優しいイケメンのテッドは本当に殺人の記憶がないのかもしれない。そのあたり、解釈を見る者に委ねるスタンスが心地よい。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

元恋人のキャロルだけはテッドに寄り添い、公判にも通い続ける。一方のリズはテッドと距離を置き、新しい人生を歩んでいる。最期にテッドが明かした衝撃の事実。“HACKSAW” は、リズが己を納得させるため思いついた創作に見えてきた。

監督  ジョー・バーリンジャー
出演  ザック・エフロン/リリー・コリンズ/カヤ・スコデラーリオ/ジェフリー・ドノバン/アンジェラ・サラフィアン/ハーレイ・ジョエル・オスメント/ジョン・マルコビッチ
ナンバー  303
オススメ度  ★★★*


↓公式サイト↓
http://www.phantom-film.com/tedbundy/