こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

THE UPSIDE 最強のふたり

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莫大な富を手に入れたのに身体の自由を失った老人と、ツキに見放された暮らしに自信も自尊心も無くしている男。まったく接点のない二つの人生が出会ったとき、2人の中で自分にはなかったものに対する欲求が芽生え始める。物語は、要介護生活を送る大富豪と彼の介助人となった失業中の男の友情を描く。マナーをわきまえず言葉遣いも下品な男を、上流階級の人々は誰しもが奇異な目で見る。ところが大富豪は彼の飾らない人柄を気に入って雇う。格差社会の頂点と下層を代表するような2人、お互いにその種の人々とは口をきいたことはない。だが日常を共にするうちに、富豪は他人の気持ちへの忖度を、男は報酬をもらって仕事をする責任感を学んでいく。パラグライダーで舞うシーンは、大空に向かって開かれている想像力を象徴していた。

超高級アパートのペントハウスに住むフィリップのもとで住み込み介助人の職を得たデルは、高級車コレクションに目を丸くする。さっそくお出かけにフェラーリのハンドルを握る。

ご機嫌を損ねないように立ち回る周囲の男女とは違い、デルはフィリップ相手でもずけずけと本音を言う。そんなデルにフィリップは新鮮さを覚え、今までの思慮深い生き方ではなく思うままに冒険するときめきに目覚める。秘書のイヴォンヌは顔をしかめるがデルはお構いなし。導尿管をつけるときにデルが “ペニス” と言い淀むシーンに、彼にも卑語への慎みがあると示唆する。デルのような貧困層の人々も根は善良で、犯罪に走るのは育った環境が悪かっただけだと訴える。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、オペラ鑑賞中にべらべらしゃべったり、高級レストランで大声を出したりと、笑いを誘う前にこちらが眉を顰めるほどの空気の読めなさは不快。そのあと彼がオペラファンになり、夜の女王のアリアや「誰も寝てはならぬ」を鑑賞できるまでに成長する姿は楽しかったが。そして、ニコール・キッドマン扮するイヴォンヌの存在感が圧倒的で、主役の2人より彼女の美しさに注意が行ってしまった。

監督  ニール・バーガー
出演  ブライアン・クランストン/ケビン・ハート/ニコール・キッドマン/ゴルシフテ・ファラハニ
ナンバー  304
オススメ度  ★★*


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