こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

パリの恋人たち

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好きな女に追い出され、気にも留めていなかった娘につけ回される男。夫を亡くした寂しさを埋めるために昔の男と縒りを戻す女。少女のころからずっと憧れていた男と付き合って幻滅する若い娘。物語はパリに暮らす男女3人の奇妙な三角関係を描く。セックスして同棲もしているのになぜか深くは愛せない。相手よりもまず自分の気持ちを第一に考える。個人主義的な、いや、むしろ自己中心的とも見える恋愛は、空気を読み忖度ばかりする日本人には新鮮だった。2人のヒロインも、中年女はエラが張り、娘は欧州系白人には珍しい平たい顔。手足が長く全身のプロポーションは素晴らしいが、美人というよりは個性的な顔立ちだ。人間として、外見よりも生き方が問われるフランス人的な価値観もまたユニークだった。

マリアンヌと別れたアベルは、数年後、彼女の夫・ポールの葬儀で再会する。そのままマリアンヌのアパートに転がり込んだアベルだが、彼女の息子・ジョゼフは “ママがパパを殺した” と言う。

一方、アベルに恋心を抱いているポールの妹・エヴは、成長した己の魅力を見せようとアベルに接近する。アベルがマリアンヌのアパートに住んでいると知ると彼女に宣戦布告までする。ところが、マリアンヌは張り合うどころか大人の対応。そのあたり、「いつも誰かに恋をしていたい」もしくは「パートナーのいない生活なんて意味がない」といった、パリジェンヌの人生に対する恋愛の比重が印象的だった。監督・脚本も務めたアベル役のルイ・ガレルの、一見女たちの気まぐれに振り回されているようで実はモテ自慢だったと考えられなくもないが。。。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

アベルはエヴの小さなアパートに移るが、すぐにふたりの仲はぎくしゃくする。おまけにジョゼフの嫉妬にも悩まされアベルは落ち着く間もない。それでも本当に大切にすべき人は誰かに思い当たり走り出す。そうなると予見していたかのごときマリアンヌの微笑みが、女のしたたかさを象徴していた。やっぱり男は女の掌で転がされる存在でしかないのだ。

監督  ルイ・ガレル
出演  ルイ・ガレル/レティシア・カスタ/リリー=ローズ・デップ/ジョゼフ・エンゲル
ナンバー  4
オススメ度  ★★★


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