こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

フォードvsフェラーリ

f:id:otello:20200114100110j:plain

下腹部にまで響き渡るエンジンのうなりと、サーキットを疾走するレーシングカーの地を這う視点。時に空気の壁に穴を穿つようにアクセルを踏み込み、時に重苦しい闇を切り裂くようにステアリングを切る。ドライバーが体感する7000回転/分、時速300キロメートルの世界を再現した映像は、圧倒的な臨場感で客席に迫る。物語は、最高峰の耐久レースに挑戦した男たちの熱い日々を描く。引退したけれどレースへの情熱は衰えていない男と、腕は確かなのに社会性に問題のある男。正反対の性格だが共通点も多い2人は、数々の技術的な難題にぶち当たってもひとつずつ解決していく。一方で欲深い権力者を相手にすると妥協もやむを得ない。巨額のカネが動くモータースポーツ、純粋さだけでは通用しない事情がリアルな人間臭さを漂わせていた。

フェラーリ社への買収話を蹴られたフォード社は、ル・マン24時間レースでの勝利を目指しシェルビーを雇い入れる。シェルビーは町で修理工場を営むケンに声をかけ、チーフドライバーに指名する。

ケンのアドバイスで開発した新車でル・マンに乗り込もうとしたシェルビー達だが、直前に副社長から横やりが入りケンはチームを外される。だがクルマの癖を知らないドライバーのせいで1年目は惨敗。シェルビーは社長から全権を委任されケンと共に翌年のル・マンでの雪辱を期す。このあたり、独裁者のごとき社長の下で新たな事業にチャレンジする者と他人の手柄を横取りしようとする者が足の引っ張り合いを演じるなど、現場で汗を流す2人の苦労話よりも興味深かった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

再びル・マンの舞台、今度はケンがコックピットに入りチームフェラーリに挑む。セクシーな曲線が美しい真っ赤なフェラーリと空気抵抗軽減重視のフォードが、わずか数センチほどの車間で抜きつ抜かれつするスリリングな展開に時間を忘れた。そして大人の対応を迫られる2人。情熱や信念は強くても他人をたやすく信用する人間はカモにされる、そんな米国流ビジネスの厳しさが印象的だった。

監督  ジェームズ・マンゴールド
出演  マット・デイモン/クリスチャン・ベール/ジョン・バーンサル/カトリーナ・バルフ/トレイシー・レッツ/ジョシュ・ルーカス/ノア・ジュプ
ナンバー  5
オススメ度  ★★★*


↓公式サイト↓
http://www.foxmovies-jp.com/fordvsferrari/