そっと気配を消して忍び寄る。高いところをジャンプで飛び移る。警戒心を解いてじゃれ合う。それらの仕種を真似ながらも、クラシックバレエ的なしなやかなダンスと歌で、不安・期待・喜び・たくらみ・希望・思い出といったさまざまな感情を表現する。人々が寝静まった夜の大都会で繰り広げられる猫たちの宴。物語は、年に一度転生のチャンスを待つ猫たちの一夜を描く。元飼い猫にとって、そこは未知の世界。野良猫たちにもそれぞれの生き方があり、夢を抱いている。だが選ばれるのは1匹だけ、それでも己を信じて今までやってきたこと今できることを必死でアピールする。時に仲間を蹴落とさなければならない。でも仲間の危機を知らぬふりはできない。長老のために力を合わせ、欲深い猫と闘う猫たちのミュージカルナンバーは理解を越えた楽しみを提供する。
ジェリクルキャッツたちの集会に招かれた捨て猫のヴィクトリアは、思い思いに生きる猫たちに目を丸くする。猫たちは長老猫・オールドデュトロノミーによる指名を心待ちにしていた。
初めて出会ったたぐいの猫たちに驚きを隠せないヴィクトリア。餌は自分で調達しなければならないけれど、誰にも拘束されない彼らに、彼女もまた生まれ変われるのではないかと思い始める。1匹1匹が独立性を保ちつつもルールは守り必要に応じて協力する。心の象徴ともいうべき長い尻尾の表情豊かな動きが、彼らの繊細な喜怒哀楽を再現していた。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
ただ、ぐうたら猫やグルメ猫、モテ猫やはぐれ猫、元劇場のスター猫や鉄道の働き者猫などの個性的なキャラが織りなす映像は、なんか一発芸大会を見ているようなぶつ切り感で、その世界観に最後までなじめない。ステージで見たミュージカルとは違い、1本の映画としてまとめるとその構成力の弱さが目立ってしまった。延々と猫たちとの付き合い方をレクチャーするエンディング曲も説教じみていたし。初演から約40年、素案と楽曲はそのままでも21世紀の「キャッツ」に脱皮してもよかったのではないだろうか。
監督 トム・フーパー
出演 ジェームズ・コーデン/スティーヴン・マックレー /ジェニファー・ハドソン/フランチェスカ・ヘイワード/ジュディ・デンチ/ローリー・デヴィッドソン/イアン・マッケラン/テイラー・スウィフト/イドリス・エルバ
ナンバー 14
オススメ度 ★★*
↓公式サイト↓
https://cats-movie.jp/