こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

AI崩壊

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人々の生活に密着してデータを集め、ネットワークでつながり、健康を見守るAI。病気から解放されケガも迅速かつ適切に治療される。だが、バイタルサインという究極の個人情報を提供している人間はAIに命を握られているのと同じ。物語は、価値のない人間を殺し始めた医療用AIを止めようとするプログラマーの奮闘を描く。テロリストの濡れ衣を着せられた彼は警察から追われながらも閉じ込められた愛娘を救出しなければならない。どこに逃げても監視カメラをハッキングした警察の捜査用AIに追跡されるが、主人公は自らのデジタルスキルを駆使して反撃する。格差社会の生きづらさと国家による国民監視・管理の息苦しさ。加えて、復活する優性思想。2020年の “今” の最悪の部分だけが拡大されたかのごとき10年後の日本は奇妙なリアリティに満ちていた。

いまや社会インフラとなったAI「のぞみ」を暴走させた容疑者となった桐生は逃走、人ごみに紛れフェリーに乗り込む。しかし、端末からの発信を警察にキャッチされ甲板に追い詰められる。

桐生は追っ手を避けて走り続けるが、捜査用AIはネットワークに接続されたあらゆるカメラから彼の情報を収集、即座に居所を特定する。ところが桐生はその裏をかき、捜査を撹乱する。このあたり、捜査用AIの弱点をたちどころに見つけ利用するなど桐生の天才ぶりがいかんなく発揮され小気味よい。その間、スマートウォッチや自動運転車、超小型追跡ドローンなど現代で普及し始めた技術の延長線上にあるテクノロジーがより洗練されて実用化されているが、便利さと引き換えに自由を失った人間の悲しい未来を予言しているようだった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

桐生は盟友の西村の助けを得て「のぞみ」の正常化を試みる。そして明らかになる、警察幹部による陰謀。「弱者は正義、障害者は神」といった左派思想が大手を振っている中、それを不満に思う輩が権力の座に就けば生産性の低い者は切り捨てられる。加えて犯罪予防名目の徹底的な監視社会。そんな悪夢が現実になるかもしれないと思わせる作品だった。

監督  入江悠
出演  大沢たかお/三浦友和/賀来賢人/岩田剛典/玉城ティナ/田牧そら/広瀬アリス/高嶋政宏
ナンバー  18
オススメ度  ★★★


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