こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

Fukushima 50

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津波など来ないという予想は軽く破られた。だれも想定していなかった自然の力に直面したとき、その場にいた人々はそれ以上の損害を食い止めようとする。物語は、震災による津波被害で崩壊寸前となった原発の暴走を止めようと、最後まで第一線に残った人々の奮闘を追う。自分たちが逃げれば東日本は壊滅すると知ったとき、責任者も末端の技術者も心をひとつにする。そして集まってきた支援部隊。ところが指揮系統の混乱で組織がうまく機能せず、対策は遅々として進まない。状況は悪化するばかりなのに、決断を下せない幹部と現場の間で不信感は募る。そこに危機管理の知識が乏しい首相が口をはさみ、さらに事態を悪化させる。「撤退などありえない」。徹底的なアホに描写される時の首相がそんなゲキを飛ばすと全員がしらけるシーンは “悪夢の民主党政権” を象徴していた。

電源喪失した福島第一原発メルトダウンから守るためにベント決行を引き受けた当直長の伊崎は、決死隊を原子炉に送り込む。原発所長の吉田は東京本店の無能な責任者との交渉に業を煮やす。

巨大な水圧の壁となって押し寄せる津波のみならず、数百個の計器が並んだ制御ルーム、大画面のスクリーンでつながれた指令室と本店がディテール豊かに再現される。そこに居合わせた人々は精一杯戦っている。できることは何でもやりできないことにも挑戦し結果を出そうとする。一方で、権力の頂点で喚き散らしているだけの首相は、パフォーマンスで視察に訪れいたずらに現場を苛立たせる。未曽有の大災害の中でそれぞれの立場の人々の思いが交錯する。そのカオスが、まだ評価が定まっていない歴史をありのままに活写していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

その他にも米軍による「トモダチ作戦」や避難生活を送る住民などが紹介されるが、あれもこれもと総花的になってしまいテーマが拡散した感は否めない。最悪のシチュエーションは免れたものの放射能汚染は防げなかった。負け戦の中にもヒーローがいたことを忘れてはならないが、焦点を絞ってほしかった。

監督  若松節朗
出演  佐藤浩市/吉岡里帆/段田安則/安田成美/渡辺謙/吉岡秀隆/富田靖子/篠井英介/火野正平/佐野史郎
ナンバー  47
オススメ度  ★★*


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https://www.fukushima50.jp/