こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

コロンバス

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非対称なのにバランスが取れている教会が立っている町。東洋人の男と地元生まれの白人女、2人ともこの町から離れたいと思っているのに、なかなか思い通りにはいかない。それでも年齢も境遇もまったく違うのに奇妙に釣り合っている2人は、町を散策するうちに少しずつお互いを理解し、教会のデザインのような関係になっていく。物語は、モダニズム建築が点在する田舎町で出会った男女の心の彷徨を描く。男はこの町で倒れた父の看病をしなければならない。女は精神的に不安定な母と暮らしている。2人とも自分の意思ではこの町を出られない。そのもどかしさを、直線と平面とガラス張りを多用した建物を評価しあうことで埋めている。計算されつくしたローアングルの端正な横長の構図と、静謐さの中に憂いを秘めた映像はあくまでも美しい。

父の急病でコロンバスに駆け付けたジンは、図書館で働くケイシーと知り合う。ケイシーはジンを観光名所にもなっている町の有名な教会や銀行、橋などを案内して回る。

翻訳の仕事の締め切りが迫り行き詰っているジン。図書館の同僚に言い寄られたりする以外は基本的に単調な日々を送っているケイシー。ジンはケイシーと町を回るうちに忙しさから解放されたいと願うようになる。ケイシーは時々携帯不通になる母が心配でたまらない。旧友に再会し都会に行けと強く勧められても言い淀むしかない切なさが、肉親と2人きりケイシーの、若さを浪費しつつも夢をあきらめきれずに生きる複雑な胸中をリアルに再現していた。静かな人生を選択するには、ケイシーはまだ経験が足りないのだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

その後も、彼らの運命を反転させる出来事は起こらず、時間だけが淡々と過ぎていく。その間、ケイシーの視点でこの町の名建築の数々が紹介されるが、あくまでも外観のみが示される。内部の構造や設計者・依頼者の人となり、由来や特徴などには触れない。「読書とゲーム」について、興味と集中を議論していたが、この映画ももっと登場人物に興味と集中を持たせる工夫が欲しかった。

監督  コゴナダ
出演  ジョン・チョウ/ヘイリー・ルー・リチャードソン/ミシェル・フォーブス/ローリー・カルキン
ナンバー  55
オススメ度  ★★


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