こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

アドリフト 41日間の漂流

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大波に呑まれて転覆した。マストは折れ、通信機器も壊れた。婚約者も消えた。残されたのはわずかな食料と水、そして幸せだった記憶。物語は、大海原をヨットで航海中に遭難した女のサバイバルを描く。南の島で出会いずっと一緒に行動してきた彼は、ヨットの操縦を一から教えてくれた。なにものにも縛られず世界中を旅してきた彼女にとって、彼は初めて腰を落ち着けて考えられる相手。彼もまた、自由な彼女を束縛することなく受け入れる。運命的な絆と、ふたりで迎える未来。お互いがお互いの人生に必要だと感じたふたりは、少しのお金と愛を深めるために長い船旅に出る。しかし、動力源も破損しヨットはただ漂流するだけ。終わりが見えない恐怖の中、希望を失わず生き抜こうとするヒロインの不安定な感情が繊細に再現されていた。

南太平洋のタヒチにやってきたタミーはヨット乗りのリチャードと知り合い、結婚を約束する。リチャードは老夫婦から彼らのヨットをサンディエゴまで運ぶよう頼まれ、タミーと共に引き受ける。

2週間ほどは順調な天候が続いたがいきなり熱帯低気圧に襲われ、タミーを船内に逃がしたリチャードは甲板から落ち海中に沈む。暴風雨が去った後、平穏に戻った海は360度水平線しか見えない。大洋の中でポツンと漂うヨットで冷静さを取り戻したタミーが胸に抱く孤独と絶望がリアルだ。それでも波間に揺れる救命ボートにしがみつくリチャードを見つけた彼女は、危険を顧みず海に飛び込み彼を助ける。「リチャードとふたりで生きたまま陸地にたどりつく」。新たな目標を見出したタミーは不安と疲労、飢えと渇きに耐える。決してあきらめないタミーの精神力の強さが印象的だった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

足を骨折したリチャードを甲板に横たえ治療するタミー。とりあえず命はつなげられるが、いつまでもつかわからない。永遠に思えるほどの単調な時間をリチャードと過ごしたタミーは、心を正常に保つのが難しくなっている。そんな、極限まで追いつめられた人間が見る幻覚が哀しくも切なかった。

監督  バルタザール・コルマウクル
出演  シャイリーン・ウッドリー/サム・クラフリン
ナンバー  53
オススメ度  ★★★


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