こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

パヴァロッティ 太陽のテノール

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鼓膜を震わせる高音で朗々と歌い上げる圧倒的な声量と繊細なテクニック、一度聞いただけで脳天を直撃しハートを鷲掴みにする。声楽をオペラファンだけのものではなく、ポップスと融合させて広めた実績は、まさに伝説と呼ぶにふさわしい。映画は、ルチアーノ・パヴァロッティが生前遺したフィルムに彼を知る人々のインタビューを加え、偉大なる生涯の足跡を追う。歌が好きな両親に育てられた。プロになって父親の夢を叶えた。下積みも経験したけれど、ワンチャンスをものにして運命を手繰り寄せた。だれもが認める実力、キャリアの頂点を極めた後もジャンルを問わないコラボで、オペラを復権させていく。一方で、芸術との距離感に悩んだりもする。そんな彼の人間的な一面を一級の資料で再現した映像は迫力満点だ。

イタリア・モデナで生まれたパヴァロッティはハイCを自在に操りデビューする。ロンドンで代役を見事にこなすとたちまち注目され、若くしてオペラ界を代表するスーパースターとなる。

辣腕マネージャーをつけて狭いオペラ界を飛び出したパヴァロッティはリサイタルで表現力を磨いていく。米国の田舎町を回るが、彼のテノールは言葉や習慣を越えて、ナマ声初体験の感動をオペラなど見ない聴衆に伝えていく。さらに中国でも公演、思想信条に関係なく彼らの胸を打つ。極めつけはサッカーW杯決勝戦前夜の “3大テノール競演” の実現だ。オペラの名曲が世界中のサッカーファンの耳に届く。クラシックに興味がなかった層の心に彼らの声が刺さり、アルバムはポップス以上の売り上げを示す。パヴァロッティの功績は、19世紀のように、大衆に、オペラに親しむ日常を取り戻させたことだろう。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

もちろん派手な私生活にも迫る。明るい性格でいつも女に囲まれていた。最初の妻との間に3人の娘、再婚後にも娘ができた。一夜限りの愛人ならもっといたはずだが、パパラッチの登場で彼の私生活は厳しく監視される羽目になる。ドミンゴはセクハラ告発に弁明したが、彼なら軽く受け流したに違いない。

監督  ロン・ハワード
出演  ルチアーノ・パヴァロッティ/ボノ/プラシド・ドミンゴ/ホセ・カレーラス/アンドレア・グリミネッリ/ズービン・メータ/ユージン・コーン /ラン・ラン
ナンバー  64
オススメ度  ★★★*


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