こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

新喜劇王 

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怒鳴られた。殴られた。踏み付けられた。つまみ出された。面と向かって侮辱された。でも決してあきらめない。物語は、下積み生活に耐える端役女優が夢を叶えるまでを描く。どんな役でもおろそかにせず演技の質にこだわるのに、撮影所では助監督にバカにされスター俳優からは虫けら扱いされる。冴えない日々が続いても、死体から彫像までカメラに映る仕事なら何でもこなし、ひたすら監督の目に留まるのを待つ。くやしさやみじめさに我慢してきた。信じていた恋人は詐欺師だった。苦労を共にした友人には見捨てられた。それでも感情を押し殺し笑顔を絶やすまいと歯を食いしばる。そんな、健気に頑張るヒロインにコミカルな装いを施した映像は、“努力は必ず報われる” というメッセージに共感以上のユーモアをもたらしていた。

エキストラのモンはバイトで生計を立てながら主役を目指して奮闘する毎日を送っている。ある日、美女になろうと鼻とあごをプチ整形するが失敗、ところが撮影中の「白雪姫」で魔女のスタントとして採用される。

それ以降も「白雪姫」でさまざまなキャラクターを演じるうちに、主演俳優のマーの機嫌を損ねる。落ちぶれているのにスター気取りが抜けないマーはわがまま放題、特にモンに当たり散らす。このあたり、主演俳優>監督>助監督>その他大勢>エキストラといったスタジオの絶対的なヒエラルキーを徹底的にデフォルメし、さらにサイレント時代を思わせる肉体を駆使したベタなギャグを組み合わせる。洗練とは正反対のおかしさを醸し出すシーンの数々はむしろ新鮮で、コメディの初心を見せられた気がした。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

マーが主役を降ろされるとともにモンも解雇される。その上、友人や恋人の仕打ちにあい、くじけてしまうモン。だが、ひょんなことからマー人気が再燃、復活のきっかけを作ったモンにもチャンスが巡ってくる。オーディション会場で繰り広げられる一発芸のオンパレードなど、本筋とは関係にないところでも笑いを取ろうとするサービス精神に、しばし時間を忘れた。

監督  チャウ・シンチー
出演  ワン・バオチャン/エ・ジンウェン/チャン・チュエンダン/ジン・ルーヤン/チャン・チー/ユアン・シンツェ
ナンバー  78
オススメ度  ★★★


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