こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ハリエット

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自由か死か。もう絶対に奴隷の身分に甘んじたりはしない。その強烈な意思は神に通じ、度重なる苦難と迫りくる危険から彼女を守る。物語は19世紀半ばの米国、元奴隷のヒロインが同胞を解放するために奮闘する姿を描く。労働力・商品として扱われ主人には逆らえない。反抗すると家族と引き離されて売り飛ばされる。それならば逃げた方がマシ。追い詰められた彼女は思い切って激流に飛び込む。その勇気と行動力は、人生を変えるには時に命がけの決断をしなければならないと教えてくれる。そして、運命と闘い続けることで周囲を巻き込み、やがて世の中が動いていく。“奴隷を扱うのはブタを育てるのと同じ、名前を付けてかわいがっていても結局は食べ、名前も忘れる” という白人農園主の言葉が奴隷の立場を象徴していた。

自身の解放を直訴するが却下されえたミンティは逃亡を決意、深夜密かに農園を脱走し自由州を目指す。徒歩でフィラデルフィアにたどりついたミンティはハリエットと名を変え、地下鉄道活動に参加する。

奴隷州の農園に潜入し奴隷を救出するハリエット。張り巡らされた協力者のネットワークは強固で、自由州ではこの時代すでに人権意識が非常に高まっていたと推察される。もちろん資金は白人が出し実行部隊は自由黒人が担う構図だが、黒人たちの士気は高い。一方で、農園主・ギデオンのハリエットに対する固執は、女奴隷へ恋心に似た感情を抱いた白人のねじれた愛ともいえる。「それでも夜は明ける」でも同様の農園主がいたが、彼らの奴隷への思いもまた複雑で、非道な白人というだけではない人間らしさがうかがえる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

その後、ハリエットは10回以上奴隷州に戻っては奴隷たちの逃亡を手引きし、“モーセ” と噂されるようになる。その間、一度も失敗せず一人の犠牲者も出さない超人的な結果を残す。ギデオンたちの執拗な追跡に何度も危機にさらされるが、そのたびに予知能力を発揮して脱出するのだ。このあたり、実在の人物だけに神格化するのは少しいただけない。

監督  ケイシー・レモンズ
出演  シンシア・エリボ/レスリー・オドム・Jr./ジョー・アルウィン/ジャネール・モネイ
ナンバー  79
オススメ度  ★★*


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