こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ANNA アナ

f:id:otello:20200611121817j:plain

モスクワの露店でバイトしていた女学生が、あれよあれよという間にパリでスーパーモデルとなる。大金持ちのパトロンも見つけ我が世の春を謳歌している、と思った次の瞬間、放たれる銃弾。物語は、旧ソ連KGBで殺し屋として育てられた女が、冷戦終結後の世界を生き抜く姿を描く。命令は絶対、失敗はすなわち死を意味する。一方で、“表の顔” のモデルでも人気を得、スケジュールはびっしり。ストロボを浴びる華やかなスタジオと返り血を浴びる暗殺者の仕事の対比が鮮やかで、緩急をつけることなく過去と現在を疾走する映像は息をつく間もないほどスリリング。銃撃戦から格闘まで、ヒロインを演じたサッシャ・ルスが長い手足で体現する流麗かつ力強いバトルアクションは、テンポよく舞うダンスのようにユニークだった。

KGBのアレクにスカウトされたアナは、ギャングの携帯電話を奪う“卒業試験” に合格、モデルを偽装してパリに送り込まれる。暗殺指令を受けては成功するが、ある日、任務の後でCIAのミラーに拘束される。

その間、何度も選択を迫られるアナ。肥溜めの生活に甘んじるか己の手で未来を切り開くか。あきらめて死ぬか生き残るために殺しまくるか。KGBに使い捨てにされるかCIAの甘言に乗るか。どちらを選んでも安息はない。ならばとアナはよりハードな道を選ぶ。それは自由のため。自分で決められる人生を生きたいのなら、戦って勝ち取るしかないと彼女の決意は訴える。次々に難題を出す上司を演じたヘレン・ミレンが圧倒的な存在感を示していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

CIAの二重スパイになったアナはその後も汚れ役を請け負いながらも着実に暗殺者のスキルを上げていく。そしていよいよKGB長官の暗殺という不可能な指令が下る。誰を信じればいいのか、誰を欺けばいいのか。いずれ使い捨てにされるのはわかり切っている。安全を確保するために練った策は荒唐無稽ながらもパワフルな熱量を持ち、アナの超人的な活躍は見ていてすが清々しさすら覚えた。後出しいんじゃんのように小出しにされるネタバレには食傷したが。。。

監督  リュック・ベッソン
出演  サッシャ・ルス/ルーク・エバンス/キリアン・マーフィ/ヘレン・ミレン/アレクサンドル・ペトロフ
ナンバー  80
オススメ度  ★★★


↓公式サイト↓
http://anna-movie.com/