こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ワールドエンド

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突然電子機器が使えなくなり、世界中との通信が途絶え文明が崩壊した。モスクワを中心としたロシア西部地域だけは無事だった。ところが、生き残った人々も集団催眠にかかったかのように何者かに心を操られている。物語は正体不明の相手に奮闘する特殊部隊員の活躍を描く。超能力を身につけた男がいる。死体に異変が起きている。そして現れた精神を支配してしまう謎めいた超人。映像は数的優位に立つ敵の中で孤立した小隊に寄り添い、彼らが感じる不安と焦り、勇気と誇りに密着、大掛かりなCGで再現する。歯が立たなくても臆せず立ち向かい、最後まであきらめずに目的地を目指す。そんな鋼鉄の意思を持つ戦士たちが銃弾を放ち、装甲車で群衆を蹴散らし、人類の危機を救おうとする姿は崇高な使命感に満ちていた。

被害を受けなかった軍事基地から、事態の調査を命じられた特殊部隊が偵察任務に出動する。だがほとんどの隊は全滅、命からがら生き延びたオレグは司令官たちが乗る装甲車と合流する。

イドと名乗る異星人が語る人類の歴史が衝撃的だ。イドは文字通りキリスト教徒が定義する「神」、人間を自らに似せて作ったという。生殖と生存の本能をウイルスにたとえ、人間は地球の先住民を滅ぼした「生物兵器」であると告げる。邪魔者が排除されたところで今度は人間を一掃して地球に移民船を送り込む。進化論など関係ない、今や人類こそが地球の環境を危うくする最大要因であることをこの作品は鋭く風刺する。発声器官を持たず対象者の意識に直接語り掛けるイドの魁偉な容貌は、進化の袋小路に陥った知的生命体の末路を象徴していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

イドの協力を得たオレグたちは異星人の首魁・ラーを倒すために高層ビルに昇る。彼らの肉体はデジタル加工されているのか、腕や足から特別なエネルギーが発生している。人類よりも数次元洗練された能力を持ちながらも最終的にはフルコンタクトの肉弾戦で勝負をつけようとするイドとラーは、理性がいくら発達しても感情があるうちは争いはなくならないと訴えていた。

監督  イゴール・バラノフ
出演  ピョートル・フョードロフ/アレクセイ・チャドフ/スヴェトラーナ・イワノー ワ/コンスタンティン・ラヴロネンコ/イリヤメラニン/アルテム・トカチェンコ
ナンバー  84
オススメ度  ★★*


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