頑張るとか努力とか根性とかは、あの震災でどうでもよくなった。今興味があるのはSNSでの発信。物語は、たまたまアップした過去の写真が誤解され、フォロワーが爆発的に増えた少年の煮え切らない日常を描く。ネット上では懸命にリア充自慢をする。予想をはるかに超える反応があると、さらなるネタを仕込んでインフルエンサーを目指す。話題が話題を呼びTVまでが取材に来ると、もはやスターになった気分。それでも偽りの自分を演じることに疑問を感じない。打ち込める目標が見つかった高校生の情熱とか復興のために汗を流す姿とかいった手あかのついた定番の青春モノとは一線を画し、あくまで主人公は困難に立ち向かおうとせずラクして手に入れられるものばかりを追い求める小ずるい設定。大きな夢や希望が持てなくなった被災地の若者の思いがリアルに再現されていた。
中学時代のハンドボール写真にたくさんの “いいね” が付いて気をよくした熊本の高校生・マサオ。岡本と組んで新たな写真をアップし続けるうちに、廃部寸前のハンドボール部からスカウトされる。
「ハンド全力」とハッシュタグをつけたのが原因で、世間はマサオがハンドボール選手だと勘違いしている。マサオは気にせず、ひたすらバズる方法を考える。一応ハンドボール部の練習には参加するがテキトーにこなすだけ。女子部の同級生にきつい言葉を浴びせられても馬耳東風を貫く。このあたり、全国から寄せられるネット住民の応援に、被災地の人々は期待にこたえなければならないプレッシャーにうんざりし、押しつぶされそうになっている現実があると教えてくれる。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
初めての試合で惨敗しても、女子部のエースのひたむきさを見せられても、昔の親友に会っても、マサオにはハンドボールに対するやる気は起こらない。“ほんとに全力出しているやつは全力とは言わない” と言われても目覚めないマサオ。虚構をはがされてやっと心の底から熱くなる彼に、誠実に生きる大切さをもっと早く気付かせ、彼が成長していく過程を見たかった。
監督 松居大悟
出演 加藤清史郎/醍醐虎汰朗/佐藤緋美/坂東龍汰/鈴木福/岩本晟夢/磯邊蓮登/篠原篤/仲野太賀/志田未来/安達祐実/ふせえり/田口トモロヲ
ナンバー 124
オススメ度 ★★
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