こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ブリング・ミー・ホーム 尋ね人

f:id:otello:20200808172625j:plain

どこにいるのか。何をしているのか。どれだけ成長したか。最愛のわが子の身の上を案じなかった日は1日もない。仕事の合間にビラをまき、NPOの助けを借り、手掛かりを探し求める。物語は、行方不明になった息子を取り戻すために胡散臭げな一家と対決する母親の葛藤を描く。夫は騙されて死んだ。信頼度の高い情報をカネで買った。警察は当てにならない。社会のはみだし者が幅を利かせ違法労働がまかり通っている。それ以上に何かを隠している。調べれば調べるほど深まる疑念に、彼女は確信を強めていく。わが身を罰するように息子の消息を追う母親の執念を、鋭いまなざしのイ・ヨンエがほとんどノーメークで髪を振り乱しながら演じる。生死すらわからない状況では、親は子供の生存を信じるほかはない。そんな母親の切実な感情がリアルに再現されていた。

身内の裏切りにあいながらも、失踪した息子・ユンスと特徴が一致する少年・ミンスの存在を知ったジョンヨンは、ひとりで現地に向かう。そこは怪しげな家族が経営する海辺の釣り場だった。

子供が2人、昼間はこき使われ、夜は監禁されている。ミンスは粗野な男の慰み者にされていている。ここを実質的に仕切っている汚職警官・ホン警長が狩りに出るシーンで、彼は鹿の母子を仕留め得意げになる。もちろん解体して食うのだが、彼の目にはむしろ動物の命を奪うことへの快感が浮かんでいる。釣り場の男女はホンには逆らえない。児童虐待の発覚を恐れたホンはジョンヨンを体よく追い返す。ホンたちも決して恵まれた生活を送っているわけではなく、カツカツの暮らし。経済至上主義、弱者がより弱い立場の者を搾取する構図が、現代韓国の格差を象徴していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ミンスは釣り場に来る以前の記憶はあいまいなのだろう。尋ね人のビラを見た彼は、自分がユンスと思い、釣り場を脱走する。そして居合わせたジョンヨンと対面を果たすが、すぐに悲劇が襲う。もはや救いなどない、それでもあきらめずにユンスの所在を追い続けるジョンヨンの姿にわずかな希望が見いだせた。

監督  キム・スンウ
出演  イ・ヨンエ/ユ・ジェミョン/イ・ウォングン/パク・ヘジュン
ナンバー  94
オススメ度  ★★★*


↓公式サイト↓
https://www.maxam.jp/bringmehome/