こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

2分の1の魔法

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生まれる前に死んでしまったお父さんと一目会いたい。復活の呪文を伝授された少年は、あらん限りの力を使って魔法を成就させようとする。ところが、いくら固い決意をしてもいつもの癖でつい弱気の虫が出てしまう。物語は、内向的な高校生が父の遺品である魔法の杖を授かり、父子と兄弟の絆を深めていく姿を描く。お調子者で騒がしく、なにごとにも押しつけがましい兄に残念さとあきらめが募っていく。それが愛情と理解しているがゆえに何も言い返せなかった。だが、兄と共に冒険の旅に出た少年は、困難に思えることも自信を持てばやり遂げられると学ぶ。しつこいくらい両極端にデフォルメされた兄弟のキャラクターが展開させる前半のドタバタ劇は見ていてうんざりするほど過剰だが、それが伏線となって後半に生きてくる構成に思わず唸った。

科学文明の発達で魔法が廃れた世界、イアンは亡父から杖と呪文を贈られ、1日だけ父をよみがえらせるチャンスを与えられる。しかし、父は腰から下が復活しただけで魔法の石が砕けてしまう。

目標を箇条書きにしたメモを手離さないイアンは、兄のバーリーと共に新たな魔法の石探しを始める。イアンはロールプレイングゲームの作法に則り、まずはキーパーソンを訪ね、そこから試練の道を進んでいく。独善的に進路を決めるバーリーに対し、慎重で臆病なイアンは気後れするが、父への思いから少しずつ難局から逃げない気概を身につけていく。深い地割れを渡るシーンは、心の持ちようで置かれた状況の捉え方も変わり、結果も変わっていくと教えてくれる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

あらゆるトラップをかいくぐり出口に達したイアンとバーリーだが、そこは目指していたはずの場所ではないと知って落胆、イアンはバーリーに対し決定的な感情の齟齬をきたす。ところが、バーリーの粘りが復活の呪文を完成させる。そこでイアンが見せたのはこの冒険で得た勇気。本当の強さとは、強靭な身体能力や難局にひるまない精神力ではなく、やさしさと自己犠牲であるとイアンの行動は訴えていた。

監督  ダン・スキャンロン
出演 
ナンバー  137
オススメ度  ★★★


↓公式サイト↓
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