この世に強い未練や恨みを残して死んでいった人の怨念が染み付いた部屋。時に白い霊体となってカメラに映り、時に生前の姿になって生きている者たちに何らかのメッセージを送る。ほとんどの場合、それは捻じ曲げられた悪意。物語は、自殺や殺人で空き部屋となったアパートを借りて住む芸人が体験する恐怖を描く。あまり乗り気はしなかったが、TV受けした。やっともらったレギュラーの仕事を失いたくなかった。さらに刺激的な映像を要求するプロデューサーの期待に応えるために、なりふり構わず悪霊が待つ部屋に引っ越しを繰り返す。事件・事故があった物件は家賃格安、不動産屋にとっても一度居住実績ができると告知義務がなくなる。貸し手借り手ともwinwinになるから結構需要がある。専門の公示サイトまであり、つい検索してしまった。
売れないままピン芸人になったヤマメは、元相方・中井の「事故物件に住みます」企画に挑戦する。霊感のある梓を部屋に連れていくと次々と心霊現象が起き、たちまち売れっ子になる。
舞台でスベりまくり、中井からコンビ解散を通告されたヤマメ。自分が追及するお笑いが客に受け入れられないことに不満を持ちながらも、現実を追認するだけの冷静さはある。だが、唯一の理解者・梓と仲良くなっても、恋人にするほど距離は詰めない。梓の気持ちを知りながらも、彼女の能力を利用するためにズルズルと関係を断ち切らない。崖っぷちの危機感と有名になるためには何でもするというヤマメの狡猾さが、計算できる者しか生き残れないお笑いの世界の厳しさを反映していた。東京進出が決まるとあっさり梓を切り捨てる冷たさがヤマメの人間としての底の浅さを象徴する。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
死者は興味本位で近づいてくる生者に怒りを覚えるのだろう。ヤマメは怖い思いをしながらも霊の撮影が終わると次の物件を探し始める。その間、ヤマメは幽霊に免疫ができ、むしろネタにするたくましささえ見せる。だからこそ黒ずくめの “死神” を登場させるが、こちらは全然怖くなかった。。。
監督 中田秀夫
出演 亀梨和也/奈緒/瀬戸康史/江口のりこ/MEGUMI/真魚/木下ほうか
ナンバー 144
オススメ度 ★★★