こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

オフィシャル・シークレット

f:id:otello:20200903110502j:plain

自らの価値観に基づいた正義。彼女にとってそれは、誤った命令にはたとえ法を破り祖国に対する反逆とみなされても行動を起こすこと。物語は、イラク戦争開戦前、英国の諜報機関に勤務するヒロインが業務上入手した極秘メールをリークした罪に問われ、司法と争う姿を描く。元々盗聴が仕事、非友好国の通信内容を翻訳・分析している。だが、国連決議にかかわる国の動静を監視しろという米国のゴリ押しには反感を覚える。戦争をすべて否定しないが、無理筋の殺し合いは避けたい。反戦を声高に叫ぶ理想主義者ではなく現実を見据えている。だからこそ、でっち上げられた理由の下で行われる戦争は我慢ならない。嘘と欺瞞に満ちた諜報の世界でも守るべき一線はあるのだ。彼女の奮闘は、民主主義はまだ機能していると教えてくれる。

米国NSAからの盗聴依頼メールを上司から受け取ったキャサリンは、プリントアウトして活動家に託す。メールは新聞記者・マーティンの手に渡り一大スキャンダルとして一面を飾る。

掲載する前にメールの真偽を確かめるためにウラ取りに走る新聞記者たち。その間、電波の届かない地下駐車場で受け渡ししたり、匿名の情報提供電話があったり、ネタ元に直接あたるなど、アナログな手法は21世紀になっても健在。そして発売後、記者たちが保守系メディアへの出演を次々と断られていく。このあたり、当時の英国の空気が、米国の世論に影響され “フセイン憎し” 一色に染まっていく途上だったとうかがわせる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

情報漏洩で逮捕されたキャサリンは、人権派弁護士・ベンと共に対策を練る。機密漏洩で有罪にはできるが、大義なき戦争に加担した政府の責任も問われかねない。検察側の苦肉の策がなんとも歯切れが悪く、一方で、キャサリンを見せしめにする意趣返しもする。そのあたり、国家を相手に戦うためには、相当の忍耐と時間ときっと費用も掛かることをにおわせる。それでも、政治家の暴走を止めるにはひとりひとりが勇気を出さなければならないとキャサリンの勝利は訴えていた。

監督  ギャヴィン・フッド
出演  キーラ・ナイトレイ/マット・スミス/マシュー・グード/レイフ・ファインズ/リス・エヴァンス/アダム・バクリ
ナンバー  143
オススメ度  ★★★


↓公式サイト↓
http://officialsecret-movie.com/