開館前から震えながら列を作り、オープンと同時にトイレに駆け込んで、鏡の前で身だしなみを整える。もう寒くはない。夜まで暖かいところにいられる。長く凍える夜を過ごした彼らはやっと人心地つく。物語は、日中、公立図書館に屯するホームレスが、夜になっても退館せずそのままフロアを占拠して立てこもり、人間らしい扱いを求めて抗議する姿を描く。一応、他の利用者に迷惑を掛けまいと気を使っている。一方で、時々心身に問題を抱える者が騒ぎを起こしたりもする。図書館員は、彼らを差別しないまでも距離を置いている。にもかかわらず、図らずも反乱に巻き込まれたとき、彼らの側に立つ。書物に人生を救われた、今度は自分がだれかを救う番。決意を固める主人公の眼差しが印象的だった。
厳寒の夜、シェルターからあぶれたホームレスたちが大挙してスチュワートの勤務する図書館に押し掛ける。スチュワートは彼らとともにバリケードを築き、警察はビルを交渉人に立て説得にあたる
逮捕され、職を失い、前科も増える。ところが、弱者を踏み台にして選挙戦を有利に戦おうとする検事の言葉に奮いたち、手柄を焦るマスコミには古典の引用で反撃する。時に物知りのホームレスの指示に従い要求を突きつけたりもする。ホームレスたちの中には祖国のために戦場に出た退役軍人もいる。失業を機に家を奪われた者もいる。だが、凶悪犯罪には手を染めず町の片隅で息をひそめて生きてきた罪なき人ばかり。彼らの人権を顧みない現代社会に対する不満が徐々にスチュワートに湧き上がり、怒りに昇華されていく過程は、格差にまみれた自由競争の問題点が凝縮されていた。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
ホームレスたちは決して蔵書を粗末に扱わない。図書館の備品を壊したりもしない。それは彼らも「公共図書館は民主主義の最後の砦」と理解しているからだろう。本来きちんとした教育は受けている。マナーや道徳も身につけている。そんな善良な人々でさえホームレスになりかねない、株高に浮かれる米国の危うさが浮き彫りにされていた。
監督 エミリオ・エステベス
出演 エミリオ・エステベス/アレック・ボールドウィン/ジェナ・マローン/テイラー・シリング/クリスチャン・スレイター/ガブリエル・ユニオン/ジェフリー・ライト
ナンバー 148
オススメ度 ★★*
↓公式サイト↓
https://longride.jp/public/