こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46

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ステージに上がると笑顔が消え、刺激的な音楽とともに激しい振り付けのダンスが始まる。物語性のある歌と踊りは演劇空間にいるような緊張感さえ醸し出す。カメラは異色のアイドルグループのデビューから活動休止まで密着、少女だった彼女たちが成長しプロの自覚を持ち、人気急上昇と共に消費され、やがて力尽きていく過程を記録する。年齢もバックグラウンドもバラバラの少女たちが全員団結して芸能活動をこなし、一方で無邪気にはしゃぐ姿は明るい女子高生のノリのよう。しかし、圧倒的な表現力を持つセンターの登場でいつしかグループの楽曲が彼女中心の構成になっていく。徐々にできるセンターとの溝。いがみ合うわけではないがもはや対等ではない。そんな微妙な人間関係の変化は、アイドルもまた普通の女の子だと思わせてくれる。

2016年、デビューシングル発売を前に数人ずつに分かれてCDショップを巡る欅坂46のメンバーたち。新譜の予約ボードで自分たちのグループ名を発見すると大喜びする。

憤っているようでもある。叫んでいるようでもある。決して媚びたりはしない。彼女たちの歌は、既成の価値観や世の中の常識に逆らおうとするものばかり。均一性が求められる日本社会で「出る杭」として生まれた者の生きづらさを再現する。だがそれはグループ内における平手友梨奈の立ち位置そのもの。欅坂46のパフォーマンスをライブ会場で体験するファンは、そういったグループの内情を知りつつ歌の内容に共感する。これは「設定」ではなく現実である。彼女たちの「リアル」の部分でさえ商品にしてしまう大人の思惑は残酷だ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

政治の季節は20世紀に終わり自由と民主主義がほぼ保障されている日本では、欅坂46が歌の中で怒りをぶつけるような敵はいない。ところが、返還時の約束が反故にされ北京政府の圧力が強まる香港では、活動家の周庭が逮捕・拘束時に「不協和音」の歌詞が頭の中を駆け巡ったと言っていた。欅坂46の歌が海を越えて外国人の心に響く、世界が狭くなったと改めて感じた。

監督  高橋栄樹
出演  欅坂46
ナンバー  151
オススメ度  ★★★


↓公式サイト↓
https://2020-keyakizaka.jp/