こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

オン・ザ・ロック

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ビジネスに忙しいけれど家族思いの夫、ふたりの子供はかわいい盛り。でも、物書きの仕事はイマイチ波に乗り切れない。物語は、夫の浮気を疑うヒロインが実父と共に証拠を集めるうちに人生に必要なことに気づいていく過程を描く。女とみればすぐに口説こうとする父は、親としては最低だが男としては魅力的。恋愛における男女の機微を知り尽くし、不倫男の心理を分析する。彼女はそんな父が頼もしく思えたり、負担に感じたりもするが、基本的に父娘仲は良好。父みたいな男を頭では軽蔑しているのに心では一緒にいる時間を楽しんでいる。数多の女に手を出し、女心を操る術を心得た父をビル・マーレイが飄々と演じ、NY富裕層のハイソなライフスタイルを垣間見せてくれる。クラシカルなオープンカーで夜の街を疾走するシーンが洒落ている。

出張帰りの夫・ディーンの荷物から女性用ボディオイルを見つけたローラは、父・フェリックスに相談する。フェリックスは早速ディーンの身辺調査を始め、部下の美女と付き合っていると言い出す。

フェリクスから男の本能について聞かされるほどローラの疑惑は深まっていく。スマホメメッセージをチェックしたり尾行・張り込みをしたり、決定的証拠は見つけられないにしても状況的には限りなく黒に近い灰色。ディーンとの将来を案じながらも、フェリックスに振り回される刺激的な日々に、いつしかウキウキしているローラ。在宅ワークで子供の送迎以外は外出する機会が少ないローラにとって、「非日常」がもたらすドキドキ感がいかに大切かをフェリックスは教えようとする。強引にも見えるフェリックスの誘い方は、実は娘を心配する父親の愛情表現なのだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

そして、ディーンが部下と共にメキシコに出張する情報をつかんだフェリックスは、ローラを連れて乗り込み、そこでまたひと騒動起こす。妻と夫、永遠に分かり合えない男と女の勘違いと早とちり。同じような題材を扱ってもウディ・アレンならもっと洗練された味わいを醸し出していたに違いない。

監督  ソフィア・コッポラ
出演  ビル・マーレイ/ラシダ・ジョーンズ/マーロン・ウェイアンズ/ジェニー・スレイト/ジェシカ・ヘンウィック
ナンバー  167
オススメ度  ★★*


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