砂浜に打ち上げられたニタリクジラの腹から出てきたのは大きなビニールシート。海岸で力尽きた渡り鳥の胃はプラスチックの小片でパンパンに膨らでいる。飲み込んでも消化されず排出もできないまま、動物の消化器に留まり、命を奪うプラスチックゴミ。カメラは大量に海洋放棄されるプラゴミが原因の生態系の破壊と、人間の生活に及ぼす影響を追う。ペットボトルを始めあらゆる商品の容器として非常に便利なプラスチック。発展途上国などでは住民の意識も低く、川にそのまま捨てられる。劣化し細分化しても完全に分解されることはなく、海に流れて海生生物の体内に入る。映画はその過程を通じて、人類が今何をすべきか何をやめるべきかを問う。
シロナガスクジラが回遊するスリランカ沖の海域、陸地から30キロ以上離れているのに海面は薄い油膜に覆われ小さなプラゴミが浮遊する。海底にはまだ砕けていないゴミが沈殿している。
微細になったプラゴミをプランクトンが食べ、そこから食物連鎖を経て大型生物に蓄積されていく。日本人は魚の内臓を取るから大丈夫なのかと思いきや、プラスチックの毒性は食用の身の部分にも浸透していて、やはり無事ではいられない。一方、アジア・太平洋の貧困地域の人々はゴミの山の上に掘っ立て小屋を建て暮らしている。彼らは発がん性物質にさらされ不妊症の発生率も高い。米国と中国、2超大国がプラゴミの一大発生源である現実を考えるに、両国の指導者はもっと海洋汚染への関心を高めるべきだ。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
南太平洋の島国・ツバルの現状にプラゴミ問題が凝縮されている。地球温暖化に関連付けられた海面上昇で国土が侵食されているだけではない。そもそもこの国にはゴミ処分場がなく、あらゆるゴミは第二次世界大戦中に米軍が掘った穴に放り込まれるだけ。人類が何もせず手をこまねいていると、地球全体がツバルになるとディレクターは警告する。いずれにせよ、まず日常からプラスチックの使用を減らす、文明社会にどっぷりと浸かった我々にできるのはそれだけだ。
監督 クレイグ・リーソン
出演 クレイグ・リーソン/デビッド・アッテンボロー /シルビア・アール/タニヤ・ストリーター/リンジー・ポルター
ナンバー 166
オススメ度 ★★★