こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

望み

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たとえ人殺しであっても息子の無事を願う母。犯罪者となって逃げ回っているよりもむしろ被害者になったほうがマシと考える父。両親の胸中がわかるがゆえに複雑な感情を持て余しストレスをためる妹。物語は、殺人事件にかかわった息子に心を痛める家族の葛藤を描く。息子の友人が惨殺された。一緒にいた息子をはじめ、犯人は行方不明。警察は肝心なことを知らせてくれない。マスコミは容赦なく私生活に踏み込んでくる。ネットは中傷誹謗であふれかえっている。雑誌記者は知らなかった息子の素顔を教えてくれる。周囲の知人は興味本位で噂をばらまき、それを信じる人もいる。次々にもたらされる情報は家族の希望を奪うものばかり。そんな状況の中で、冷静さを失う母とあくまで理性的に振舞おうと努める父が対照的だ。

高校生の息子・規士が無断外泊した翌日、彼の友人が死体で見つかる。現場から逃走した2人組のひとりが規士である可能性が高まり刑事が訪ねてくるが、父も母も現実を受け入れられない。

被害者の交友関係から規士が容疑者扱いされるが、一方で彼もまた殺されたのではないかと疑念が持ち上がる。どちらに転んでも結果は最悪、両親は眠れぬ夜を過ごす。最近の規士は明らかにグレていて、世間は彼らに同情するどころか、面白がっている。それでも、規士を擁護してくれる女子クラスメートもいる。もう自分たちではどうにもならず藁にもすがりたいという状況で、父と母の言動が男女の思考回路の違いをリアルに再現していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

雑誌記者から規士の普段の評判を聞き、母はさらに頑なになっていく。極力抑制してきた父にも限界が近づいている。そして明らかになる真実。反抗的な態度をとっていても、子供はきちんと親を観察している。愛情を持って接すれば、思いはちゃんと子供に届いている。やる気をなくしていたんじゃない、心配をかけまいとしていただけ。子育て方法は間違っていなかった。両親の気持ちと規士の気持ちが相互に伝わっていたのは、この耐えがたい悲劇の唯一の救いだった。

監督  堤幸彦
出演  堤真一/石田ゆり子/岡田健史/清原果耶/加藤雅也/ 市毛良枝/松田翔太/竜雷太
ナンバー  172
オススメ度  ★★★


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