こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

アウェイデイズ

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フード付きウインドブレーカーにジーンズ、三本線が入ったスニーカー。そろいのスタイルでキメた若者たちは、地元サッカーチームの応援にかこつけては乱闘に明け暮れる。カジュアルかつシンプルないでたちは、固い結束のシンボル。物語は、英国の地方都市でくすぶっている青年が、不良グループとつきあううちに、内なる衝動を解放していく姿を描く。仕事と家を往復するだけの退屈な日常、ケンカと酒とナンパに励む不良たちがまぶしかった。相手をぶちのめす快感に目覚め、ボコられる痛みに生きている実感を覚えた。初めてできた親友とは適切な距離の取り方がわからず、つるんだり気まずくなったり。だが、きちんとしたオフィスで働く主人公は自分が恵まれているとは気づかない。そんな、中産階級と労働者階級の見えない壁が浮き彫りにされていた。

ライブハウスでエルヴィスと知り合ったカーティは、パックというフーリガングループに加入する。パックは列車で敵地に乗り込んでは地元のフーリガンと衝突を繰り返していた。

当初エルヴィスはカーティがパックの連中と付き合うのをやめさせようとしていた。パックの中では知的なエルヴィスは、教育を受けたホワイトカラーのカーティには荒々しい世界が耐えられないと思ったのだろう。ところがカーティは、集団抗争になるといつも先陣を切り成果を上げる。一方で、エルヴィスとの2人の時間は、カーティにとってかけがえのないものとなっていく。そして暴力とセックスに溺れていくカーティだが、どこかまだ居心地の悪そうな表情は崩さない。まだサッチャー改革以前、それは彼が住む町が醸し出す閉塞感があまりにも強烈だからなのだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

その後も妹をレイプした男に仕返しに行ったり、他の街で暴れたりと、カーティの顔は生傷が絶えない。パックのリーダーが仲間割れして殺されても、人生を顧みたりするでもなく、深い悲しみに暮れるわけでもない。あくまで感情を抑制した演出と落ち着いた色調の映像は、1979年の空気をリアルに再現していた。

監督  パット・ホールデン
出演  イアン・プレストン・デイヴィス/ニッキー・ベル/リアム・ボイル/スティーブン・グレアム/イアン・プレストン・デイヴィーズ/ホリデイ・グレインジャー
ナンバー  179
オススメ度  ★★★


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