こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

どうにかなる日々

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結婚式で知り合った花嫁の元カノ2人、卒業した男子生徒への思いを断ち切れない男性教師、性に目覚める思春期のカップル。みな、日常を狂わせるほどではないけれど、どこか物足りない感情を持て余している。物語は、そんな普通の人々が抱える葛藤に寄り添い、普通ではない体験を彼らにさせる。同性愛を自然に受け入れてしまった、恋した相手が年下の同性だった、早すぎる性への渇望が抑えきれないetc. 映画は彼らの言動を通じ “普通” とか “常識” といった価値観にちょっとだけ抵抗して見せる。ただ、彼らに人生を変える勇気はなく、世の中に抗う覇気もない。基本的には大きな変化を好まず、胸の隙間に芽生えた小さな願望をかなえたいと思っている。ところが彼らの平凡な日々を切り取った映像にはヤマもオチもなく、共感も覚えなかった。

トイレで泣いていた悦子はあやに声をかけられ痛飲、そのまま彼女とベッドで一夜を共にする。2人は恋人として付き合いだすが、話題になるのは共通の元恋人・ユリとの思い出だった。

他人のおっぱいは気になるのか、彼女たちはまずお互いのおっぱいの感触を確かめる。自分のものとは形も大きさも張りも違う。赤ちゃんの時に吸った母親のものように柔らかくない。同性だからこその興味で、触感を楽しむ。繊細な指先を這わせる感覚は、男のごつごつした手でもまれるのとはまた異なる快感なのだろう。男子校の先生も女への性的欲求は薄く、教え子たちとの交流が心地よい。狭い部屋に男ばかりでぎゅうぎゅう詰めになるのは、むしろセックス以上に興奮する一体感なのだ。思春期カップルは女子の方が早熟だが、男子は彼女の気持ちがわからなくなっていく。中学生になると態度がよそよそしくなったりもする。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

いずれのエピソードも、今を生きている人々の苦悩というほどでもない微妙な心の動きをとらえ、リアルに再現はしている。だが、せっかく映画にするのならもっと志の高い内容に昇華してほしかった。もちろん原作の枠からはみ出せないのは理解しているが。。。

監督  佐藤卓哉
出演  花澤香菜/小松未可子/櫻井孝宏/山下誠一郎/木戸衣吹/石原夏織/ファイルーズあい
ナンバー  182
オススメ度  ★★


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