こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

パピチャ 未来へのランウェイ

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女性差別が公然と行われているのに、ほとんどの人は報復が怖くて口をつぐんでいる。でも彼女だけは黙っていられない。物語は、イスラム原理主義者が台頭していた時代のアルジェリア、ファッションデザイナーを目指す女子学生の闘いを追う。かつてはフランス流の近代的な教育が施されていたのだろう、その影響のもとでフランス語を話す彼女たちは、イスラム社会では不信心者。女は人前では髪を隠さなければならない。露出の多い服装もはばかられる。結婚したら家庭に入り夫に尽くす。街で男たちから因縁をつけられ、学生寮では女たちから指導される。アラーこそ唯一の神と考える者たちから彼女らは異端視されている。だが、目の前で自由が制限されていくのは耐えられず、彼女は抵抗を続ける。アラーの名を唱えればテロリストも正当化される世界などやはり異常だ。

寮を抜け出して親友とクラブに繰り出すネジュマは、トイレでドレスの注文を受けては制作してカネに換えている。同時に、世の中が保守化していることに危機感を覚えことあるごとに反駁する。

女性はヒジャブの着用が義務付けられようとしている。西欧風のファッションが好きなネジュマは到底受け入れられない。記者をしている姉が暗殺されても、かえって闘志が湧いていく。ファッションショーを開くのはもはや人間として守るべき最低限のプライドと確信したネジュマは、イスラム女性が身にまとう布をアレンジするなどの工夫をすることで反骨心を隠さない。ところが教養があり進歩的だと信じていたボーイフレンドたちも、実は女は男の所有物という価値観が抜けていない。先進国に移住するしか自分らしく生きる道はない。彼女たちの悲痛な叫びがネジュマの作品に凝縮されていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

様々な妨害をされながらもファッションショーの準備を進めるネジュマたち。そこに見知った顔の男も加わった絶望的な悲劇が襲う。結局、銃という圧倒的な暴力の前では理想などまったくの無力。それでも、次世代に希望を託すネジュマの表情がわずかな救いだった。

監督  ムニア・メドゥール
出演  リナ・クードリ/シリン・ブティラ/アミラ・イルダ・ドゥアウダ/ザーラ・ドゥモンディ/ナディア・カッチ
ナンバー  188
オススメ度  ★★★


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