こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい!

f:id:otello:20201120225251j:plain

セリフは浮かぶがプロットが定まらない。雑事が増えるばかりで時間はない。それでも、完成させ成功させなければ後がない。物語は、新作コメディを依頼された売れない劇作家の奮闘を追う。借金だらけの有名俳優に即興の押韻が気に入られた。偏見に耐えてきた老人のエスプリに勇気をもらった。親友から頼まれた恋文の代筆がヒントになった。妻以外の女性を本気で愛している気分になった。だがそれらはすべて台本のため。その後も次々と降りかかる雑多な難題を解決しながら、主人公はペンを走らせる。自分の巨大な鼻についてさまざまな観点からメタファーを用いて考察する有名なシーンが雑談の中で生まれたというエピソードは、詩人ならではの豊かなボキャブラリーと表現力に満ち、フランス語の美しさを改めて認識した。

コクランのための新作を請け負ったエドモンはまったくアイデアが浮かばず苦悶する。ある日、親友・レオのジャンヌへの恋を手助けしたことから、シラノ・ド・ベルジュラックのキャラクターを思いつく。

マルチな活動をしながらも容姿にコンプレックスを持ち、女性には奥手なシラノ。一生の恋を精神的に実らせるために美男の仲介者を使う。その設定を具現化するために、エドモンはレオを騙ってジャンヌに手紙を出し続ける。ジャンヌはエドモンが書いた情熱的なメッセージをレオからと信じ思いを募らせる。ウディ・アレンの言葉通り、“女はアーティストに弱い” のだ。一方で、映画は人種差別への抗議、女性の社会進出、不貞に対する倫理観といった設定が、21世紀の価値観に合うようにアレンジされるなど、リベラル傾向が強い。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

初日が迫るが、ジャンヌに手紙の秘密がばれたり、コクランが演劇界を追放されたり、ヒロイン役女優のわがままに振り回されたりと前途多難。さらに幕が上がっても続くトラブルにエドモンは気が休まらない。ただ、「シラノ」同様この作品ももっとコミカルな味付けでよかったのではないだろうか。フランス語が理解できればもっと楽しめたかもしれないが。

監督  アレクシス・ミシャリク
出演  トマ・ソリベレ/オリビエ・グルメ/マティルド・セニエ/トム・レーブ/リュシー・ブジュナー/アリス・ド・ランクザン
ナンバー  201
オススメ度  ★★*


↓公式サイト↓
https://cyranoniaitai.com/