こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

フード・ラック!食運

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たれに付け込んで焼いた牛肉で千切りキャベツの山を覆い、炊き立てご飯に刻んだ漬物を乗せる。母が作ってくれた、シンプルだけど身も心も幸せに浸れるメニューに思わずよだれが出そうになる。物語は、天性の味覚・嗅覚と牛肉の知識を持つ青年が、母の味を再現しようと奮闘する中でさまざまな人と出会い成長していく姿を描く。相棒はネット信者の新人記者。彼女は己の舌よりも他人の評判をあてにしている。タップするだけで手に入る情報に振り回されている。そんな彼女に、素材を楽しむ食べ方から手間暇かけた調理法まで、グルメの基礎を伝授していく青年。肉が焼ける音に耳を澄まし、ベストのタイミングを見計らって口に運ぶ。真っ赤な肉がほんのりと焦げていく過程は、あまりにもおいしそうで空腹時に見るにはつらい。

グルメサイト用の取材を依頼された良人は担当の竹中と共に焼き肉店巡りを始める。人気店でメニューの嘘を見抜いた良人は店主に持論を語るが、居合わせたグルメ評論家・古山に言い負かされる。

かつて東京都内で伝説の焼き肉店を営んでいた母とは疎遠になっている良人だったが、彼女が入院したのを機に久しぶりに実家に戻る。その後、母と親交のあった有名店を巡るうちに、それらの店主から母がいかに偉大な焼き肉店主だったかを聞かされる。さらに閉店の原因を作った良人を一切攻めなかった母のやさしさを知る。ライバルにも味の秘密を教える、自分の味を認めてくれた人への惜しみない愛は、きっと返ってくる。もう何十年たっているのに恩義は絶対に忘れない、焼き肉店主たちの義理堅さが印象的だった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

その後、古山と再会した良人は肉の熟成について議論し合い今度は見事に論破する。ただ、焼き肉の蘊蓄を語り合うシーンでいちいち台詞を大げさな字幕に変換する処理が非常に鬱陶しく、映像に集中できなかった。そのあたりは言葉ではなく映像で見せてほしかった。まあ、焼き肉のみならず、和食やカレーに人生を賭けた料理人たちの心意気が伝わる作品だったが。

監督  寺門ジモン
出演  EXILE NAOTO/土屋太鳳/石黒賢/松尾諭/寺脇康文/白竜/東ちづる/筧美和子/大泉洋/大和田伸也/竜雷太/りょう
ナンバー  206
オススメ度  ★★*


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