手袋の中は三本指の手、足の指は1本しかなく、かつらの下はあばただらけのハゲ頭、耳まで裂けた口には鋭い歯が並んでいる。見た目は絶世の美女、正体は醜い化け物。巻き舌で自信満々にしゃべる大魔女に扮したアン・ハサウェイの圧倒的な存在感が、この子供向きの作品を大人も楽しめるレベルに昇華させていた。物語は、魔女のせいでネズミになった少年が仲間と共に復讐する過程を追う。魔女は日常のあちこちに潜んでいて、子供たちを動物にするチャンスを常にうかがっている。差し出されたお菓子を食べたら最後、もう元には戻れない。言葉は喋れてもやっぱり異様、やがて彼らはそのまま一生を終えてしまう。ネズミの視点から見た人間界は危険がいっぱい、でも魔女をやっつけなければ自分たちの未来もない。そんな寓意に満ちた世界観がディテール豊かに再現されていた。
おばあちゃんと暮らす少年は魔女の手から逃れるために高級ホテルに泊まりこむ。だが、そこに大魔女率いる魔女軍団が集会を開くためにやってくる。少年は大魔女に見つかり変身薬を飲まされてしまう。
同じくネズミの姿に変えられたメアリーやブルーノとともに、おばあちゃんがいる部屋に逃げ帰った少年。人間に戻る方策は変身薬にあると当たりをつけ、大魔女の部屋に忍び込んで1瓶盗み出す。その際、大魔女に見つかりそうになったりもするが何とか切り抜ける。日本の子供はよく知らないおばちゃんからはあめちゃんをもらう。ところが、米国では絶対に見知らぬ大人からお菓子をもらってはいけないと、このような童話で戒める。実際に毒物が混入していた事件でもあったのだろうか。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
その後の展開も特にひねりはなく、3匹のネズミは下位の魔女たちを片付けたものの大魔女に追い詰められるが、彼女はかわいがっていたペットに裏切られるという悪にふさわしい最期を遂げる。そして、少年たちがネズミとしての “人生” をまっとうしようとする決意は、変えられない現状に抗うより現実を精一杯生きることが大切だと訴えていた。
監督 ロバート・ゼメキス
出演 アン・ハサウェイ/オクタビア・スペンサー/スタンリー・トゥッチ/クリス・ロック/クリスティン・チェノウェス/ジャジル・ブルーノコーディ=レイ・イースティック
ナンバー 213
オススメ度 ★★★