こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

新解釈・三國志

f:id:otello:20201215132615j:plain

民百姓に愛されたリーダーも、知略に長けた軍師も、天下無双の豪傑も、その人物像は後世の人々が勝手に創作したもの。本当はみな優柔不断で気が小さく無責任で女好き。フツーの人とそれほど変わらない。物語は、国が三つに分裂した中国、歴史上最大の決戦に臨む指揮官や腹心の武将たちの人間模様を描く。正史や小説とは正反対のキャラ設定、男たちはひたすら饒舌に口を動かし弱音と本音を吐きまくる。それは中原に鹿を逐う勇気や理想の裏で、いつ戦に負けて首を刎ねられるやもしれぬ心の叫びでもある。農民が苦しむ姿は見たくない。でも血を見るのはもっといや。覇権を目指した古代の英雄たちも、実はそう思っていたに違いないという着想がユニークだ。笑えないギャグの波状攻撃に、いつしかこの作品の世界観にどっぷりつかっていた。

魏の曹操後漢を簒奪し蜀の劉備は朝敵にされる。劉備孔明を参謀にスカウト、孔明は呉の孫権と同盟を結ぶことを進言する。長江を埋め尽くす魏の大水軍に対し、呉蜀連合軍は対岸で迎え撃つ。

酔ったはずみで天下国家を論じ大言壮語する劉備。素面の時はいつも逃げ腰で面倒くさいことを避けようとする。緒戦の黄巾党討伐で敵将のゴタク散々聞かされやる気をなくすところから、すっかり劉備のパブリックイメージを壊すことに成功している。当然、孔明三顧の礼など尽くすわけはなく、義兄弟の張飛関羽に頼りっぱなし。一方の孔明も伏龍とは名ばかりの浪人で、劉備のオファーを二つ返事で引き受ける。このあたり、先入観を完全にひっくり返す展開はかえってすがすがしい。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

そしていよいよ迎えた赤壁の戦い劉備は魏軍との圧倒的な兵力差に恐れをなしなんとか生き延びる方法を考えている。孔明孫権の前では大ボラを吹いて安請け合いしたのを後悔している。でももう後には退けないところまで追いつめられている。そんな彼らの姿は、タカ派の元首もやり手の実業家も、組織のトップは自信満々に振舞っていても内心ではおどおどしていると教えてくれる。

監督  福田雄一
出演  大泉洋/賀来賢人/橋本環奈/山本美月/岡田健史/橋本さとし/高橋努/岩田剛典/渡辺直美/ムロツヨシ/山田孝之/城田優/佐藤二朗/西田敏行/小栗旬
ナンバー  220
オススメ度  ★★*


↓公式サイト↓
https://shinkaishaku-sangokushi.com/