こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

パリのどこかで、あなたと

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不眠症の男と過眠症の女。男はやさしすぎるがゆえに対人関係をうまく築けない。女は気遣うあまり恋が長続きしない。物語は、大都会でひとり暮らしをする男女の小さな悩みに満ちた日常を追う。職場の合理化で昇進した男はリストラされた同僚を心配する一方で、配置転換先で知り合った黒人の女とは波長が合わない。プロジェクトリーダーを任された女は過大な期待に押しつぶされそうになる。そしてそれぞれが心の不調の原因を突き止めた時、彼らの人生を停滞させていた足枷が取れる。隣り合ったアパートの最上階の部屋、手を伸ばせば届く距離に住んでいる。メトロや食料品店や通りで何度もすれ違っている。なのに、互いに気づかないまま。そんなもどかしい展開がふたりの未来を想像させる。

物流倉庫で働くレミー心理療法士から他人ともっとかかわれとアドバイスされ、SNSに登録する。研究者のメラニーマッチングアプリを紹介され、見知らぬ男とのデートを重ねるが楽しめない。

レミーは隣人から押し付けられた子猫を飼い始める。実家に帰っても胸襟を開く親族はおらず、話を聞いてもらえるのは心療療法士だけ。レミーが見せる子猫に対する無防備なまでのかわいがり方は、孤独から脱却したい彼の本心を象徴していた。メラニーもまたなかなか理想の相手が見つからず、思いは定まらないまま。彼女はレミーの部屋から逃げ出した子猫を保護する。レミーメラニーも家族のつらい記憶を抱えている。そのトラウマを克服できないうちは、本当に愛する人とは巡り合えない。それがわかりかけているのに具体的には何をすればいいのか思い浮かばない。すぐには出会わないふたりにやきもきさせられる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

運命の人など待っていてもやってこない。ネットの中にも存在しない。だが、身の回りの身近な現象をよく観察すればチャンスはいくらでも転がっているとこの作品は教えてくれる。レミーメラニーの人となりは、観客には十分伝わっている。似合いのカップルになる予感がした。

監督  セドリック・クラピッシュ
出演  フランソワ・シビル/アナ・ジラルド/カミーユ・コッタン/フランソワ・ベルレアン/シモン・アブカリアン/アイ・アイダラ
ナンバー  221
オススメ度  ★★★


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