こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ワンダーウーマン 1984

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八頭身の長身に長い手足、均整の取れたプロポーションの鍛え上げられた女たちが、SASUKE風障害物レースに挑む。圧倒的な身体能力で次々と関門をクリアしていくプロローグはスリルとスピード感に満ち、スクリーンに目をくぎ付けする。物語は、女だけの超人族から来た戦士が20世紀の米国に迷い込み、暴走する欲望を止めるために奮闘する姿を描く。もう70年もこの次元にいるのにまったく老いていない。パワーの使い方は洗練され、ローカルな事故を未然に防ぎ暴力犯罪は魔法のロープで解決していく。そんな彼女もやっぱり女、愛した男を忘れられずにおひとりさまを貫いているあたりが健気だ。ヒロインの恋人以外、男はみなバカで強欲か優柔不断で無責任。一方で女は強く賢く美しい。徹底した女性至上主義はかえって清々しい。

願いを一つだけ叶える石・シトリンの鑑定をするバーバラは、ダイアナのようになりたいと願う。詐欺師のロードはバーバラからシトリンを奪い、自分自身にシトリンの効能を移植する。

ダサイ恰好だったバーバラは見る間に垢抜けた美女に変身。ロードは他人の願いを叶える見返りに莫大な富と権力を手に入れていく。ダイアナは戦死した恋人・スティーブとの再会を願うと、外見が違うスティーブが現れる。だがシトリンの代償はダイアナのパワーを徐々に削いでいく。それは仕事と恋の両立に苦労する現代女性の悩みそのもの。現場に出てバリバリ活躍することを運命づけられた彼女の、スティーブのせいで思う存分力を発揮できないもどかしさがリアルに再現されていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて大統領をもしのぐ影響力を握ったロードは、さらに全人類のよこしまな欲望を実現させる手段を画策、人々は我を忘れ世界は混沌におちいり全面核戦争の危機が迫る。それはまさに自由競争の果ての人間の醜い真実。少数の勝ち組がほとんどの富を独占する21世紀の資本主義に通じている。そしてその結果生まれる、行き過ぎた社会の不平等を打ち破るのも女たちのパワーにほかならないとこの作品は訴えていた。

監督  パティ・ジェンキンス
出演  ガル・ギャドット/クリス・パイン/クリステン・ウィグ/ペドロ・パスカル/ロビン・ライト/コニー・ニールセン
ナンバー  224
オススメ度  ★★*


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