やさしいママと仲のいい兄弟姉妹に囲まれた幸せな暮らし。子供たちは引き取り手が決まるまで満ち足りた人生を送ることができる。彼らが身を包む純白のコスチュームは純真無垢の象徴、まるで羊の群れのように疑うことも抗うことも知らず、ママを信じ言いつけに従っている。物語は、平和な孤児院に潜む秘密を知った少年少女が、周囲を高い塀に囲まれた施設から脱走を試みる姿を描く。孤児たちは鬼の食料になるために育てられている。出荷されるとすぐに殺される。ぐずぐずしていると自分の番がやってくる。幸い監視は緩く、仲間を集め作戦を練る時間も場所も十分にある。だがいつの間にか計画は洩れている。なにを信じればいいのか、誰を頼ればいいのか。リーダー格の3人が作戦を練り訓練し実行に移す過程は意外性に満ちていた。
ママと鬼が取引している現場を目撃したエマとノーマンはレイに打ち明け、施設から逃げ出す計画を練る。エマは子供たち全員を連れていくと主張するが、ママは新たにクローネを見張り役に据える。
彼らの体には発信機が埋め込まれていて、どこにいてもママに居場所を管理されている。一方で、逃走用具を手作りし、子供たちに体力をつけさせるための訓練も施さなければならない。エマとノーマン、レイは討議を重ね実行可能なプランに煮詰めていく。常に希望を胸に抱きひとりの脱落者も出さないように気を配り、笑顔を忘れずに自らの意志を貫くエマには、21世紀における女性リーダーの理想像が投影されていた。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
この映画の対象となる小学生が理解するためにわかりやすくしているのだろう、台詞まわしが説明的で俳優たちの演技も大げさな学芸会のよう。そもそも、幼少時から育てているのだから、ある程度教育で洗脳すれば子供たちは従順になるはず。死といった概念を教えなければ脱出したいなどとは思わないだろう。原作コミックの設定を変えるわけにはいかないが、そもそもサバイバルのスキルがない子供たちは孤児院の外で生きていけない。