こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

アンチ・ライフ

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環境は荒廃し、貧困層が最後の移民船に押し寄せる。だが乗船できるのはエリートのみ。物語は、恋人のコネを使って密航者となった若者が荒くれ者たちと共にエイリアンと闘う姿を描く。20数年後の未来だが、乗務員は勤務中にタバコを吸い酒を飲んでいる。ほとんどの移住者は冬眠中だが、起きたまま任務に就く警備・管理担当者の共用エリアはまるで安酒場のようなギスギスした空気が漂っている。単調で退屈な勤務、気を紛らわせる娯楽もない。テクノロジーの粋を集めたはずの星間宇宙船なのに、AIに監視・管理された清潔で快適だが居心地の悪い空間ではなく、人間の安っぽい感情が渦巻く混沌とした空間設計になっている。そこにあるのは、生き残りを許された人々の間にも格差があるという現実。移住先でも底辺で生きなければならない労働者階級の悲哀が凝縮されていた。

発射間際の移民用宇宙船に紛れ込んだノアは雑用係として古参のクレイの下に配属される。ある日、密かに持ち込まれた小動物が乗務員を襲い始め、襲われた者はゾンビ化する。

小動物は人から人に乗り移りゾンビを増殖させるエイリアンと判明、クレイらは武器を持って立ち向かうが銃器は効果がない。火炎放射器が有効とわかるが、押し寄せるゾンビに少しずつ追い詰められていく。このあたり、宇宙船内で発砲したり火炎放射して大丈夫なのかなどと考えてしまうが、クレイたちはお構いなしに攻めまくる。一方のエイリアンも少しずつ体を成長させいつしか人間をはるかに超えるサイズになっている。その雑な造形には思わず失笑を漏らしてしまった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

人体が爆発するシーンは再現しないし、服を着たままの死体を解剖する。宇宙船内の構造も安っぽくストーリーも「エイリアン」にゾンビ物を加えただけの稚拙さ。もう少し企画の段階からきちんと練り直し、作品としてのクオリティを高める努力をしてほしかった。ブルース・ウィリスがなぜ出演したのが不思議。まあ、人間は他の惑星に行っても厄介な存在でしかないという主張には賛同したが。

監督  ジョン・スーツ
出演  コディ・カースリー/ブルース・ウィリス/カラン・マルベイ/レイチェル・ニコルズ
ナンバー  10
オススメ度  ★*


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