こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

どん底作家の人生に幸あれ!

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つらいとき哀しいとき寂しいとき苦しいとき、空想の翼を広げればすべてを忘れハッピーになれる。心の自由はだれにも奪えないのだから。物語は、裕福な家庭に生まれた主人公がさまざまな貧困を経験し、恋や友情を育てながら作家として成功する過程を描く。子供のころから作り話は得意だった。表現力をつけるために、印象深いフレーズや気の利いた会話の断片をメモに残した。やがて頭の中で作り上げたキャラクターに命が芽生え、ひとりでにエピソードが紡ぎ出されていく。同じ症状で悩まされている男から妄想を取り除くためにメモ用紙を張った凧を空に泳がせる発想は、作家という人種の想像力の豊かさを象徴していた。困難に直面しても、少し考え方を変えるだけでそれが這い上がるチャンスにもなりうるとこの作品は教えてくれる。

母の再婚相手から虐待された末、瓶詰工場に売り飛ばされたデイヴィッドは過酷な労働条件の下で成長し、叔母のベッツィを訪ねる。彼女の援助を受け、デイヴィッドは名門校に入学する。

デイヴィッドが子供のころに遊びに行った、難破船を逆さにした住居がユニークだ。きちんと防水処置は施されそれなりの居住スペースがあり家族で暮らしても快適そうだ。デイヴィッドもひと目で気に入る。この家の逸話はデイヴィッドの創作なのかと思っていたら、後に学生時代の親友と遊びに行って新たな事件を起こしたりする。その間、ベッツィが破産したり弁護士事務所に就職したりとデイヴィッドの人生は浮き沈みを繰り返す。貧しいときでも卑屈にならず、順風のときでも調子に乗らず、ひたすら人間観察を怠らず面白そうなネタを集めこれぞと感じたことは実行に移す。アイデアと体験、デイヴィッドの日常は、クリエイター業のヒントにあふれていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

その後、使用人の立場から成り上がったユライヤとの確執を経て、デイヴィッドはベッツィの財産を取り戻す。奇人変人善人悪人金持ち貧乏人etc. 個性豊かな登場人物に囲まれたデイヴィッドの冒険、まだまだ続きが知りたくなった。

監督  アーマンド・イアヌッチ
出演  デブ・パテル/アナイリン・バーナード/ピーター・キャパルディ/モーフィッド・クラーク/ヒュー・ローリー/ティルダ・スウィントン/ ベン・ウィショー/ポール・ホワイトハウス
ナンバー  210
オススメ度  ★★★


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