こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ファーストラヴ

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父を刺した。倒れたまま放置してきた。血が滴る包丁を手に歩いていた……。物語は、殺人を犯した女子大生の心の闇を解き明かそうとする公認心理師が、自らのトラウマに向き合う姿を描く。容疑者は殺害を認めているが動機については語らない。弁護士もお手上げ状態の中、心理師は彼女の過去を紐解いていく。そこで見つけたのは思春期以前の性的な体験。大人の男たちから興味の対象とされ、口に出せないまま我慢する。それが続くうちに抵抗をあきらめ心を閉ざしたまま彼らを受け入れてしまう。彼女の沈黙の叫びは、男たちの有言無言の圧力に “NO” と言う勇気がいかに大切かを教えてくれる。狂気と哀しみを湛えた瞳を持つ容疑者を芳根京子が怪演、サイコパスと呼ばれる殺人者をリアルに再現していた。

拘置所に収監されている環菜と面会した由紀は、彼女の異常な態度に驚きを隠せない。弁護士の庵野と共に調査を進めるが、環菜にかかわった人々の評判は芳しくなく、母ですら環菜を嫌っていた。

面会中にパニックになった環菜の真意を探るために、由紀は少女時代の彼女を知る人々に取材を重ねていく。その過程で、父に対する複雑な感情を抱えるという共通点を見つけた由紀。程度の差こそあれ、一つ間違えば自分もまた環菜のようになったかもしれない。そんな考えが由紀を捉え、大学時代の苦いデートを思い出す。男の性的な仕種に潔癖のバリアを張ってしまう由紀と、体の要求には積極的に応えてしまう環菜。父親の嗜好のせいで歪んだ性認識しか持てなくなった彼女たちの、絞り出すような思いが切実だった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、事件現場から包丁を握ったまま帰宅したり、焼き肉用のはさみで髪を切ったり、途中で罪状を否認したりと細かい設定に粗さが目立つ。裁判が始まると一層混迷が深まり、アナウンサー志望なのにTV局の面接官の視線に耐えられなかったなどと証言する。心神喪失状態だと言いたいのか? さらに、包丁を突き刺した事実まで否定し、由紀は環菜の無罪を信じようとする。展開が強引すぎる。

監督  堤幸彦
出演  北川景子/中村倫也/芳根京子/板尾創路/石田法嗣/高岡早紀/木村佳乃/窪塚洋介
ナンバー  25
オススメ度  ★★


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