こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ある人質 生還までの398日

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政府が助けてくれると思っていた。交渉次第でなんとかなると楽観していた。ところが、家族に突き付けられたのは個人では用意できないほどの莫大な身代金。物語は、武装集団の人質となった青年と、彼を救出しようとする家族の奮闘を追う。いまだ銃弾砲弾飛び交う現地取材、用心はしていたが見込みが甘かった。許可を取っていたにもかかわらず、有無を言わさず拉致された。待っていたのは壮絶な拷問と出口が見えない絶望。テロリストの憎悪は想像を絶するほど深く、異教徒には容赦ない。一方で、誘拐がビジネスとして成立していて、カネになると思っているうちは命を奪わない。主人公と家族の途方もない苦難は、ジャーナリストや人道支援気取りでそんなところにノコノコ出向くバカ者たちに警鐘を鳴らす。

体操選手の夢を絶たれたダニエルはカメラマンに弟子入り、紛争地帯で暮らす人々にレンズを向ける仕事にやりがいを覚え始める。だが、シリアに入国後、突然小銃を手にした男たちに囲まれバンに乗せられる。

民兵たちはダニエルを縛り上げ、足の裏を杖打つ。経験したことのない痛みにダニエルは泣き叫び許しを請う。食事を運ぶ男の子が手の縛めを切ってくれたりするが、大人の民兵たちは一切の温情を見せない。徹底して苦痛を与え、希望を持たせないように肉体と精神を追い詰めていく。圧倒的な暴力の前では個人は無力、目から光を失いロバの鳴きまねまでして民兵の機嫌を取る姿は、人間の尊厳など狂信者の銃の前ではなんの役にも立たないと教えてくれる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

複数の西洋人人質が監禁されている部屋に移送されたダニエルは、米国人のジムと親しくなる。ジムは特殊部隊による救出を信じているのか、心を強く保ち時にユーモアをにじませてダニエルを笑わせたりする。国民を奪還する米国、アドバイスはするが交渉はしないデンマーク、自己責任と突き放す国もある。自由社会とは宗教も文化まったく違うならず者に理性は通用しない。価値観の違う相手とは理解し合えないとこの作品は訴える。>

監督  ニールス・アルデン・オプレブ
出演  エスベン・スメド/トビー・ケベル/アナス・W・ベアテルセン/ソフィー・トルプ/サーラ・ヨート・ディトレセン
ナンバー  30
オススメ度  ★★★*


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