こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実

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我が身をかえりみず同胞を救出しようとする勇気・献身・自己犠牲は、最上級の勲章に値する。生き残った兵士たちは、彼の功績を政府と国民に認めさせるのがせめてもの罪滅ぼしと、重い口を開いていく。物語は、ベトナム戦争で戦死した兵士叙勲の調査命令を受けた政府職員が、戦場の真実を探る姿を描く。作戦の見込みが甘く多数の人的被害を出していた。味方からの援護もなく、むしろ誤爆された。絶望的な四面楚歌、その時ヘリコプターから一本のロープを伝って降下してきた男は負傷兵を命がけで手当てした。真のヒーローはどんな人物か。彼の死をどう評価すべきか。ベトナムを知らない若者が隠蔽された事実に迫っていく過程は重厚かつスリリング、米国民に深い傷を残した負け戦はいまだ総括されていないのだ。

1999年、国防総省に勤務するハフマンは、ベトナム退役軍人から当時の戦闘で戦死したピッツバーグ名誉勲章を授与するよう嘆願される。渋々関係者の証言を集めるがみな一様にトラウマを抱えていた。

ピッツバーグは空軍所属の衛生兵ながら陸軍の戦闘地域に飛び込み、被弾した陸軍兵に救命措置を施していく。彼の行動は軍紀違反で、ヘリコプターを危険にさらしている。それでも、彼によってヘリに引き上げられた負傷兵もいて、ピッツバーグを責める者はいない。普通ならすぐにでも勲章に値する行為と認められるはずなのに、ハフマンに話が来たのは戦争終結後20年以上たってから。その間、何度も叙勲申請はあったのに、そのたびに握りつぶされた案件。いまや政府高官となった元将校がこの作戦に絡んでいた事実が明らかになるうちに、何やらきな臭い方向に進んでいく。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

米軍は敗走、ベトコンは横たわる米兵にとどめを刺していく。動ける米兵は戦友の死体に紛れベトコンをやり過ごそうとするが、銃撃を浴びる者もいる。降伏しない米兵たちは、ベトコンの捕虜になると死ぬよりつらい日々が待っていることを知っているのだろう。このあたり、ベトナム戦争の非人間性が浮き彫りにされていた。

監督  トッド・ロビンソン
出演  セバスチャン・スタン/クリストファー・プラマー/ウィリアム・ハート/エド・ハリス/ピーター・フォンダ
ナンバー  226
オススメ度  ★★★


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