こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

迷子になった拳

f:id:otello:20210303142348j:plain

ほとんどの打撃系格闘技が禁じている技が許される。グローブをつけずバンデージを巻いた拳で殴り合う。流血や骨折は当たり前、打ちどころが悪ければ即入院。過酷で過激で残酷なミャンマー発祥の格闘技・ラウェイ。カメラはラウェイの魅力に憑りつかれた2人のファイターに密着、彼らのかなわぬ夢を共に追う。元体操選手だった男は鍛え上げた肉体を武器に新たな地平を目指すが、挫折を繰り返す。一度格闘技を離れていた男は、本格的な復帰を望むが立ちはだかる障壁は高い。2人とも練習で流した汗の量が結果につながらない。彼らなりには精一杯頑張っているのだろう。それでも試合前の調整に失敗するなど失態を繰り返す。ある意味、社会から弾かれた男たちがもがきながら自分探しをしている姿は、無様であるがゆえに人間らしい。

競技人口の少ないラウェイに転身した金子はミャンマーで武者修行に打ち込むが、現地の一流選手には歯が立たない。日本で体重差のある相手と対戦するが、その試合が物議をかもす。

日本では他格闘技から「ラウェイルール」での参戦がほとんど。それゆえ試合でラウェイの精神を軽んじるようなふるまいがあったりする。主催団体が複数存在するなど選手とは無関係なところで泥仕合が繰り広げられるなど、選手を取り巻く環境もまだまだ厳しい。きちんとしたマネジメントを受けていない金子は立場が弱くほとんどフリーター扱いだ。取り上げられてはいなかったが、食えるほどのギャラはもらっていないはず。それでもラウェイにしがみついているのは、他の道に進む勇気がないから。金子の母は彼の甘えを見抜ききつい言葉を投げつける。そんな覚悟のない男の悲哀をカメラは容赦なく掬い上げる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

一方、復帰組の渡慶次は契約体重を守れないままリングに立つ。本来失格のはずが、興行側は強引に戦わせる。試合後、トレーナーからきつい叱責を受ける渡慶次。次々と若い選手が台頭してくる格闘技の世界で、モチベーションを保つのは至難の業であると渡慶次の背中は物語っていた。

監督  今田哲史
出演  金子大輝/渡慶次幸平/ソー・ゴー・ムドー/ロクク・ダリル/浜本“キャット”雄大
ナンバー  24
オススメ度  ★★★


↓公式サイト↓
http://lostfist.com/