こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

まともじゃないのは君も一緒

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“好き” という気持ちを定量的に言わないと理解できない男と、恋人同士が付き合い始める瞬間を知りたい女子高生。周囲とぎこちない人間関係しか結べないふたりは、協力して恋について学んでいく。物語は、予備校講師が恋愛知識豊富な教え子の指南で “フツーの恋愛” を実践していく過程を描く。同僚の女が食事に誘っても定食屋に連れて行ってしまう。何事にも理由を求めしまい話が理屈っぽくなってしまう。別にひとりでも困らないからとその状態を放置してきた。だが、それでは一生結婚できないと指摘された彼は一念発起、彼女が立てた作戦で高嶺の花に接近する。テンポがいいのにかみ合わないセリフ、常識とはかなりズレた価値観、一生懸命になるほどすれ違っていく思い。コメディの定石を抑えつつも、不思議な感性をまとう主人公ふたりのキャラが新鮮だ。

数学講師・大野からどうすれば結婚できるか相談された香住は、大野にきりっとしたスーツを買わせ、美奈子に接近させる。美奈子は尊敬するベンチャー企業社長・宮本の婚約者だった。

大野には美奈子を楽しませるような気の利いた会話ができないはずなのに、飾らない世間知らずなところが逆に将来に不安を抱えていた美奈子の心をとらえる。酒も入り意気投合した大野と美奈子、だが大野の失敗を期待していた香住は面白くない。このあたり、恋愛マニュアル的な情報には長けているけれど実際の経験がない香住の微妙に揺れ動く感情がリアルに再現されていた。その後、偶然を装って美奈子に再開する作戦を大野は実行に移す。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

大野を「結婚できる男」に変えるという目的で行動を共にしていた香住だったが、宮本へのあこがれが色あせてくるにつれ自分の本当の気持ちに気づいていく。一方、鈍感な大野も、美奈子と宮本を別れさせることを数学の解を求めるかの如くとらえていたが、他人の気持ちを忖度する程度には進化する。世の中のフツーに嫌気がさしたふたりが森の中で語り合う姿は、変人でも無理に自分を変える必要はないと教えてくれる。

監督  前田弘二
出演  成田凌/清原果耶/山谷花純/倉悠貴/大谷麻衣/小泉孝太郎/ 泉里香
ナンバー  47
オススメ度  ★★★*


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