こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

劇場版シグナル 長期未解決事件捜査班

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過去とつながる1台の無線機、スピーカーからは現在起きている事件の発端ともいえる未解決事件を捜査していた刑事の声が聞こえる。腐りきった今を変えるために過去に手を加えること選んだ現在の刑事は、過去にいる刑事に指示を出す。物語は、要人暗殺事件の捜査に関連する未解決事件を発掘した刑事たちが、その未解決事件を未然に防ぐことで連続した時の流れを断ち切ろうとする姿を描く。幾重にも張り巡らされた秘密と嘘。それを暴くための壮大な陰謀。立ちはだかる官僚組織の壁。そして過去と現在をつなぐ細い糸。連続するアクションはスリリング、一枚ずつ皮をむくようにテロリストの謎を解き明かしていく過程はミステリアス。2台のバイクに追い詰められた主人公が一瞬の機転で危機を乗り越えるシーンは手に汗を握った。

政府高官が毒ガスで暗殺される。犯行に使われた毒ガスが2009年にも使われた形跡があることを知った三枝は、大山と連絡を取る。大山は2009年の事件を担当していたが、もみ消されていた。

要人を乗せるようなハイヤーなら踏み違い防止などの安全装備を備えているはずだが、ハイヤーはなぜか暴走し高速道路から交差点に転落する。狙いは要人のはずなのに、運転手まで殺してさらに一般市民まで巻き添えになる可能性がある暗殺の仕方はとても理解できない。実際、2009年の事件では同じ手口で多数の死傷者が出ているなど、これでは無差別テロと同じ。毒ガスを使うなら金正男暗殺のように、ターゲット以外に被害者を出さないのが最小限の配慮ではないか。犯人の目的が復讐なのはわかる。だが私怨を晴らすために無関係な犠牲者を出すのはまったく共感も同情もできなかった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

犯人は意外な人物で、三枝は犯人が雇った殺し屋たちをひとりずつ倒して大規模テロを阻止しようとする。もういくら声明を出してもむなしく響くばかり、警察庁のキャリア組がこの程度の見識で務まるのかと開いた口がふさがらない。タイムパラドックスを忘れさせるディテールを作りこんでほしかった。

監督  橋本一
出演  坂口健太郎/北村一輝/吉瀬美智子/木村祐一/池田鉄洋/青野楓/杉本哲太/奈緒/田中哲司/鹿賀丈史/伊原剛志
ナンバー  59
オススメ度  ★★


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