こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

パーム・スプリングス

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目が覚めると昨日の朝に戻っている。死んだはずなのにやっぱり昨日の朝で目覚める。同じ時間軸を繰り返す世界に落ちたふたりは、そこで初めて人生について、愛について真剣に考え始める。楽しい一日が永遠に続くのが果たして幸せなのかと。物語は、タイムループにとらわれた男と女が通常世界に戻ろうと奮闘する姿を描く。何をやっても無駄だったけれど、何をやらかしても一晩寝れば清算される。刺激的ではあるが次第に物足りなくなってくる。男は、開き直ってこのままの暮らしも悪くないと思い始める。だが女は、やっぱり時間が経過するほうがいいと帰る方法を探す。自分たちに降りかかった現象を、“手に負えないもの” ととらえる男と、量子レベルの歪みと冷静に分析し科学的に解決しようとする女。その対比が鮮やかだ。

友人の結婚式に出席したナイルズは退屈そうなサラに声をかけ、パーティ会場から連れ出す。だが謎の男に矢で射られ洞窟に逃げ込む。ナイルズを追ったサラは、翌朝、前日と同じ状況で目覚める。

夢から覚めていないだけなのか、周囲の人々に確認するサラ。原因がナイルズにあると気づき彼を問い詰める。もう長くここにいるのだろう、ナイルズは落ち着いてこの世界のルールをサラに説明する。分かり合い頼れるのはお互いだけ、そんな状況ゆえに否応なく彼らは男と女として意識し合う。ただそのあたり、ふたりはセックスをしても運命の相手などという気負いはなく、あくまで脱出するためのパートナー。深い絆で結ばれた恋愛にまで発展しないあたりが軽くて楽しめる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

量子物理学を学んだサラは不確定要素の高い解決策を思いつく。さまざまな人間の真実を見つめてきたナイルズは、サラの計画に乗れない。どうせ失敗して死んでも昨日の朝に戻るだけ。勇気を出して現状を打破しようとするサラに対して躊躇するナイルズ。彼を恨んでいる謎の男も含め、男たちは変化を恐れている。その、20世紀の映画とは男女の役割を逆転させた “いかにもな” ジェンダー設定は通俗的すぎる。

監督  マックス・バーバコウ
出演  アンディ・サムバーグ/クリスティン・ミリオティ/ピーター・ギャラガー/J・K・シモンズ/メレディス・ハグナー
ナンバー  64
オススメ度  ★★*


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http://palm-springs-movie.com/