狭い場所での格闘技対決。水上車・ボート・ジェットスキーが入り乱れる急流での人質争奪戦。金ピカスーパーカーの壮絶チェイス。香港アクションの伝統を忠実に受け継ぎつつも壮大にスケールアップした映像は息つく間もなく波状攻撃を仕掛けてくる。物語は、武器商人に雇われた傭兵部隊と警備スペシャリスト集団の攻防を描く。要人父娘の身柄を狙う組織には、米軍を憎むテロリストがバックについている。警備会社は父娘を命がけで守らなければならない。ロンドン、アフリカ、中東、ドバイと国境をまたいで繰り広げられる手に汗握る展開は、まさしく中国資本のなせる業だ。エンタテインメントに徹しているようでそこかしこにちらつく中共の影に、ジャッキー・チェンが蝕まれているのが哀しかった。もう「香港映画」は「中国映画」と呼ぶべきなのか。
実業家のチョンがオマル一味に誘拐されそうになるが、トンの部下が阻止する。その後オマルはチョンの娘とエージェントのひとりを拉致、トンは中東の要塞都市に救出部隊を派遣する。
ロンドンにはどれくらいの華僑が住んでいるのだろう。トラファルガー広場で春節を祝うなど、もはやその存在感は社会にがっちり組み込まれている。一方、要塞都市への奇襲は昆虫や鳥を模したドローンで敵のアジトに自在に入り込みライブ映像と音声を収集している。このあたり、まさしく国民総監視体制で培った技術が応用されているかのよう。中国や中国人を敵に回すとあらゆるデータが盗まれ、利用される。自由やプライバシーは体制側を批判しない範囲でしか許されない、そんな窮屈さが映像からにじみ出ていた。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
ドバイに集結したオマル一味を捕らえるために、トンも部下たちを引き連れて現地に赴く。そこではテロリストの攻撃を米空母に教えるなど、一応米国には気を使っている。そして街中で繰り広げられるカーチェイス。派手なスタントはサービス精神満載なのだが、どこか検閲の跡がちらつく。ジャッキー・チェンの主演作を能天気に楽しめた20世紀が懐かしい。
監督 スタンリー・トン
出演 ジャッキー・チェン/ヤン・ヤン/アレン/ムチミヤ/シュ・ルオハン/ジュー・ジャンティン/ジャクソン・ルー
ナンバー 83
オススメ度 ★★*
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