こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

大綱引の

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地元に400年以上伝わる伝統の綱引き、その先導役に任命されるのはこの上もない名誉だ。だが自分に務まるのだろうか? 物語は、東京からUターンしてきた男が、年中行事を通じて一皮むける姿を描く。もう若くはない。だが、まだ人生をあきらめるほど老け込んでもいない。一応仕事は順調だが恋人はいない。そんな主人公が、家族だけでなく、出会った様々な人々の助けを借りながらまっすぐに生きようとする。ほとんどの住人が顔見知りかどこかでつながっている小さな地方都市、噂はすぐに駆け巡る。評判こそがカネに換えがたい価値なのだ。だからこそ礼儀は欠かせない。綱引きの敵味方双方の一番太鼓が一升瓶を携えてそれぞれの支援者を一軒ずつあいさつ回りする姿は、人と人のつながりこそが伝統を守ると教えてくれる。

工務店の跡継ぎ・武志は仕事だけでなく、引退を宣言した母に代わって家事も担わされ大忙しの日々。折しも、恒例の大綱引きが迫っていて、武志の名も一番太鼓の候補に挙がる。

面倒見のいい武志は韓国人研修医・ジヒョンと出会い、彼女にコクられる。かつて幼馴染の典子とお互いに意識していたのに付き合うまでには至らなかったトラウマか、武志はあいまいな態度。一方で、本心では一番太鼓をやりたいのに、言い出せないまま。周囲に対し濃やかに気を配れる好青年なのに自分のことは後回しにする武志の、やさしさゆえの優柔不断さはいかにも草食系男子だ。自衛隊員となった典子の凛々しい迷彩服姿とは対照的だった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

一番太鼓に外れ、ジヒョンとも進展しないまま大綱引き本番の日は迫ってくる。ところが、ひょんなことから一番太鼓を任される武志。引き受けた以上は最後までやり遂げる決意を固める。その間、彼の周辺では様々な秘密と嘘が浮上するが、基本的にはみな善意から出たもの。濃密な関係は人間を善良にするとこの作品は訴える。細い縄を何度も縒り、何時間もかけて太く長い縄に仕上げていく過程が、いかにこの行事が地元民の誇りになっているかをうかがわせる。

監督  佐々部清
出演  三浦貴大/知英/比嘉愛未/中村優一/松本若菜/西田聖志郎/石野真子/恵俊彰/沢村一樹
ナンバー  86
オススメ度  ★★*


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