こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

野良人間 獣に育てられた子どもたち

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森の奥の一軒家で起きた火事。焼け跡から見つかったのは大人1人と子供3人の焼死体だった。物語は、30年前に起きたこの事件の真相を探るために、ジャーナリストが当時の映像を子細に検討する過程を描く。町の人々はもうほとんど覚えていない。年老いた神父も口は重い。だが、ビデオを何度も見直していくうちに、焼失した家で恐るべき実験がなされていたことが明らかになっていく。だれが何の目的で子供たちを数年にわたり監禁していたのか。文明と切り離され適切なしつけも教育も受けてこなった子供たちに、人間としての意識や自覚を持たせるのは可能か。粗い画質のベータビデオ映像が奇妙なリアリティを演出する。

教会との対立で孤立した修道士・ファンは、町はずれの森で隠棲している。ある日森の中で暮らす10歳くらいの野生児を発見、自宅に保護して少しずつ様子を見る。

親もおらずどうやって生きてきたのだろう。髪や爪は伸び放題、肌は垢と泥にまみれている。ファンが食べ物と水を与え続けると警戒心を解き、2本足で歩くことから教え始める。だが、言葉の概念はなく、のどをふるわせての発声を身につけさせねばならない。さらに洞窟で鎖につながれたより幼い2人の男女児も見つけ自宅連れ帰ったファン。3人をきちんと文明化させるのが自らに課された使命と信じ始める。特に超常現象や恐怖体験があるわけではない。ただただ、大人からのきちんとしたケアを受けずに育った子供たちが人間としての生きるすべを失っているのが恐ろしかった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ファンがビデオカメラで彼らの行動を記録する。この映画のファンが登場するビデオテープの部分はそういう “お約束” で構成されている。ところがお構いなしに時折映像は暴走する。特に、食事の席に着いた少年が料理の入った皿を床に落として夜の戸外に逃げるシーンは、明らかに照明が使われている。ファンは片手にカメラ、片手の照明を持って少年を追いかけたのか? あらゆる意味で設定も作りこみも甘く、結局不快感しか残らない作品だった。

監督  アンドレス・カイザー
出演  エクトル・イリャネス/ファリド・エスカランテ/カリ・ロム/エリック・ガリシア
ナンバー  92
オススメ度  ★*


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