12歳とプロフィル欄に書き込むだけで、蜜に群がる蟻のように男たちがメッセージを送りつける。チャットで少し打ち解けた後、ビデオ通話に切り替えると画面に現れるのはほとんどが中年以上の男たち。映画は、12歳の少女がSNSの世界にひとりでさまよいこんだとき何が起きるかを検証する。12歳に見える成人の女優をオーディションで選び、スタジオに大掛かりな女の子の部屋のセットを組む。コンタクトしてきた相手には12歳であることを強調し反応をうかがう。男たちの目的は性的な行為、すぐに会うわけではないが言葉巧みに主導権を握ろうとする。そして彼女たちの裸の写真を送らせる。一方で自分の勃起した性器やオナニー動画を送りつけ少女たちに見せる。彼らのゆがんだ性衝動はリアルな人間関係に乏しくなった現代人の孤独を象徴していた。
SNSが気になって四六時中スマホを手放さないチェコの子供たち。彼らがどれほど危険な状態にさらされているかを実証するため、3人の女優をおとりにした10日間の実験が始まる。
男たちは極めて積極的だ。少女たちにわいせつ写真・動画、卑猥な言葉をかけるのが、法に触れるなどとは一切思っていないのだろう。なんとか彼女たちの興味を引き、なだめすかし時には脅して己の欲望を満たそうとする。あまりにもゲスな男たちの要求は思わず目をそらしたくなる。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
やがて実験は実際に会うという設定にエスカレート、何度も連絡を取った相手をカフェに呼び出してその様子をカメラに収める。その中に青少年センターの職員がいることに気づいたディレクターは、企画の枠を越えて彼に直撃する。確かに、小児性愛者がリアル世界で子供相手の仕事をしているのはまずい。だからといって、一映像作家が己の正義を振りかざして、この男を断罪する。さらに記録した映像を警察に提供したともいう。第二次大戦後長期間にわたって自由を奪われたチェコ人には、公権力に対する服従が染みついているのだろうか。作家側の立ち位置がゲス男たち以上に不愉快だった。
監督 バーラ・ハルポバー/ビート・クルサーク
出演 テレザ・チェジュカー/アネジュカ・ピタルトバー/サビナ・ドロウハー
ナンバー 90
オススメ度 ★★