こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

グリーンランド 地球最後の2日間

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生物絶滅規模の災厄が間近に迫っている。生き残れるのは一握りのエリート。物語は、地球に降り注ぐ巨大彗星の破片から逃げながら安全なシェルターを目指す家族を描く。大統領令でシェルター避難民に選ばれた。同行できるのは妻と息子だけ。道路は大渋滞、なんとか基地までたどり着いても、輸送機に乗るまでにまた手続きがある。そして少しずつむき出しになっていくエゴ。選別されたのは社会的地位も意識も高い知識人・技術者のはずなのに、主人公も彼の妻も周囲の迷惑など省みずに自分たちの都合を優先させる。そのあたり、現実には自己犠牲で多くの人々を救うヒーローなど存在しないことを象徴する。その開き直りはかえって心地よかった。助からないとわかっていても志願して、粛々と任務を遂行する軍人たちの方がよほど高潔だ。

異次元から突如現れた彗星が隕石群となって地球に襲う。環境に決定的なダメージを与える隕石が衝突するのは48時間後、ジョンは妻・アリソンと息子・ネイサンを連れて避難所に向かう。

選別者の端末には大統領アラートが送られてくる。スマホのみならず自宅のTVにまで。パーティに集まったご近所さんは政府に見捨てられたと知って黙って帰宅する。それでも未練がましくジョンに縋り付く男や母親など、ありがちな反応ではあるが胸が痛む。ジョンは無事空軍基地にたどりつくが、輸送機を強引に止めてはぐれたアリソンとネイサンを探しに行く。そのせいで離陸し遅れた輸送機が暴徒に襲われ炎上したのに、ジョンはお構いなし。アリソンとネイサンも他人に選別者だと明かし自らを危険にさらす。己の愚かさで次々と災厄を呼び込む彼らは、もう少し危機管理意識を高めた方がいい。生き残るためには他の人々もまた善意や良心を捨てていることを知るべきだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

世界を救うような責任感のある男ではない。それでも、妻子だけは命に代えても守る。眉を顰めるような行動ばかりしているジョンだが、成功者だからといって必ずしも人格者ではないあたりがリアルだった。

監督  リック・ローマン・ウォー
出演  ジェラルド・バトラー/モリーナ・バッカリン/デビッド・デンマン/ホープデイビス/ロジャー・デイル・フロイド/スコット・グレン
ナンバー  101
オススメ度  ★★*


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