こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

映画大好きポンポさん

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今が充実している者にユニークなアイデアは生まれない。追い詰められてどこにも逃げ場がなくて、懸命にしがみついている者こそが、革新を成し遂げる。「幸福は創造の敵」という言葉に込められたクリエイターの心得は、大いなる希望を与えてくれる。物語は、撮影所の雑用係の若者が監督に抜擢され、新人女優と共に映画作りに奮闘する姿を追う。真面目で探求心旺盛だが、人を押しのけてまで自分を売り込む積極性はない。自己肯定感が低く、夢を思い描くことにすら引け目を感じている。そんな彼から才能を引き出すプロデューサーが発する金言の数々は、まさしく人生の道しるべ。仕事をこなしているだけではいけない、周囲に感謝を忘れず、日々不断の努力を続けている者だけが人の上に立てるとこの作品は教えてくれる。

プロデューサーのポンポからアクション大作の予告編作りを命じられたジーン。出来上がりを誉められたジーンは、ポンポが書いた脚本の監督に指名される。ヒロインには無名のナタリーが起用される。

今までに見た映画学んだ知識を総動員して演出プランを練るジーン。演技経験のないナタリーは人気女優の付け人となって基礎を学んでいく。そしていきなりのスイスロケ。キャストもスタッフも非常に優秀、時に的を射た意見にも助けられてジーンは撮影をほぼ予定通りにこなしていく。このあたりの、突然全責任を負わされる立場になった若者が退路を断って “やればできる” という自信を得ていく過程は、予定調和的だ。それでも現場の誰よりも働く彼の背中は、リーダーのあるべき理想を象徴していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ところが編集作業に入ると今度は孤独な作業。膨大なショットの取捨選択すべてをジーンがひとりで決断し、再構成しなければならない。そして、決定的なシーンが欠けていることに気づく。監督のわがままはどこまで許されるのか、プロデューサーは寛大であるべきなのか。追加の費用はどうやって調達するのか。斬新な解決策が刺激的だった。なにより、上映時間が90分なのがクールだ。

監督  平尾隆之
出演  清水尋也/小原好美/大谷凜香/加隈亜衣/大塚明夫/木島隆一
ナンバー  105
オススメ度  ★★★*


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