まともに人の目を見て話せない。「石」になってやり過ごす。なるべく目立たないように息をひそめている。そんな私に興味を持ってくれたのは学年一の王子様。物語は、著しく自己評価の低い女子高生が、クラスメートと友情を育んでいくうちに笑顔を取り戻していく過程を描く。勉強はできるけれど、言いたいことをはっきり口にできない性格のせいで、いつも損をしている。自信が持てず大きな声が出ない。でも、思い切って「おはよう」と声を掛けたら、思いがけず友達ができた。さらに全女子注目のイケメンまでも自分を心配してくれる。憧れていたスクールライフ、見事高校デビューを果たした彼女は新たに恋まで手に入れようとするが、立ちはだかる障壁は高い。学校内での描写のみならず、湘南やみなとみらいといった映えスポットでのロケがまぶしかった。
入学早々いじめにあっていた羽花は、金髪長身で学園のアイドル・界に助けられる。その後も界と彼のグループはなにかと羽花の面倒を見てくれ、羽花は少しずつ学校での楽しみを見つけていく。
界は羽花の “係” を自称するようになり、ふたりの間は急接近していく。ところが、界の元カノが現れるなど、中学時代の人間関係を引きずったままの高校生活はなかなかややこしい。羽花の界を見る目はあこがれから恋に変わりつつあるのに、界はそれに気づいても気づかないふりを続けている。そのあたりの微妙な心理、相手の出方を見たり、考えとは反対の言動を取ったりする少女の、未熟な心の動きが繊細に再現されていた。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
2学期にはいってもふたりの交際は順調に進んでいたが、界の顔から疲れがにじみだし無断欠席も頻発する。羽花は界が抱える悩みを共有しようと彼に尋ねるが、彼女に心配をかけまいとする界の口は重い。元来やさしく思いやりのある羽花は、今度は界の “係” になって、彼を危機から救おうとする。己の思いを素直に伝えられないばかりか、界の気持ちを忖度しすぎて悪い方に考えてしまう。そんな心配症の羽花がとてもいとおしかった。